2019年5月29日付の報道は、日本の建設業界における重要な構造材、H形鋼の在庫が約5年ぶりの高水準に達したという、市場の微妙な変化を伝えました。日本製鉄の鋼材を扱う流通事業者でつくる「ときわ会」がまとめたデータによると、4月末時点のH形鋼の在庫は、前月比3.5%増の22万6,500トンでした。これは、需給均衡の目安とされる20万トンを大幅に上回り、2014年6月以来の22万トン台にまで増加したことになります。
H形鋼とは、その名の通り断面がアルファベットの「H」の形をした鋼材で、主に高層ビルや大型施設の骨組みに使われる、建設には不可欠な素材です。在庫が増加した要因としては、ゴールデンウィーク期間を含む荷動きの少ない時期であったことに加え、当時、建設需要の大きな柱であった東京オリンピック関連向け需要に一服感が出ていることが指摘されました。4月の入庫量が8万2,800トンだったのに対し、出庫量は7万5,100トンに留まり、在庫が積み上がった形です。
SNS上では当時、「東京五輪特需が終わる前兆か」「建設現場で次の大型案件が減っているのでは」といった、今後の建設需要の先行きに対する懸念の声が多く見受けられました。一方で、セメントの国内販売量が前年同月比1.2%減、伸銅品の生産量が7.3%減となるなど、他の基礎素材の動向も芳しくなく、建設市場全体が複雑な需給の波にさらされている状況でした。
コラムニストとしての私の意見ですが、このH形鋼の在庫水準の上昇は、単なる季節的な要因だけでなく、日本の建設業界が抱える**「大型案件の谷間」**という構造的な問題を象徴しています。東京五輪関連の建設がピークを越え、次の大規模な再開発やインフラ案件が本格化するまでの間、建設資材の需給バランスは不安定になりやすいでしょう。今後、この需給の緩みが市況を下押しする圧力とならないよう、安定した国内需要の創出が不可欠だと言えるでしょう。
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