酪農危機のシグナル?脱脂粉乳の在庫が9年ぶり高水準へ。ヨーグルト需要の変化と酪農家の苦悩

日本の食卓に欠かせない乳製品の需給バランスが、今、大きな転換点を迎えています。農林水産省が発表した最新の統計によりますと、2019年06月30日時点での脱脂粉乳の在庫量が7万トンを突破しました。これは実に9年ぶりとなる異例の高水準であり、現場からは戸惑いの声が上がっています。

そもそも脱脂粉乳とは、生乳からクリームなどの脂肪分を取り除いた「脱脂乳」を粉末状に乾燥させたものです。保存性に優れているため、主にパンや菓子、ヨーグルトといった加工食品の重要な原材料として広く活用されています。しかし、この便利な食材が今、倉庫に積み上がったまま行き場を失いつつあるのです。

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急ブレーキがかかったヨーグルト市場と、過去の教訓が生んだ誤算

在庫がここまで急増した背景には、これまで右肩上がりを続けてきたヨーグルト人気の停滞が指摘されています。乳業メーカー各社は健康志向の波に乗って需要の拡大を予測していましたが、消費者のトレンドが変化したことで、原料である脱脂粉乳の消費が思うように伸びなかったことが大きな要因でしょう。

さらに、2014年頃に日本中を騒がせた「バター不足」も遠因となっています。当時の深刻な品薄を教訓に、政府は輸入枠を拡大して供給の安定化を図りました。しかし、バターを作る際には必ずセットで脱脂粉乳が生産されるという特性があるため、バターを作れば作るほど脱脂粉乳の在庫も比例して増えてしまうのです。

SNS上では「あれだけバターが足りないと言っていたのに、今度は余っているのか」「酪農家さんが丹精込めて作ったミルクが無駄にならないか心配」といった不安や疑問の声が数多く投稿されています。消費者の目には、需要と供給のコントロールがいかに難しいかという現実が浮き彫りになった形です。

北海道の酪農家を襲う増産路線の影と、求められる官民一体の出口戦略

特に深刻な影響を懸念されているのが、国内最大の乳製品供給地である北海道の酪農家の方々です。これまで国を挙げて生産基盤の強化と増産を推奨してきただけに、この在庫過剰は経営を揺るがしかねない死活問題と言えるでしょう。一度増やした生産ラインや牛の頭数を、急に絞ることは容易ではありません。

私は、この問題を単なる市場のミスマッチとして片付けるべきではないと考えています。食の安全保障の観点からも、酪農家が安心して再生産に取り組める環境を守ることは、私たちの食生活を守ることに直結します。今こそ、官民が知恵を絞り、余剰分を有効活用する新しいアイデアが不可欠ではないでしょうか。

例えば、製パン業界や菓子メーカーへのさらなる活用促進に加え、学校給食や新しいレシピの開発など、多角的な出口戦略が求められます。2019年08月02日現在、業界全体がこの難局をどう乗り越えるのか、私たち消費者も関心を持って見守り、国産乳製品を積極的に選ぶ姿勢が大切になるでしょう。

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