2019年5月5日、ロシアの首都モスクワにあるシェレメーチエヴォ国際空港で発生した航空機事故は、ロシア国内で大きな波紋を広げました。アエロフロート航空が運航していた国産のスホイ・スーパージェット100(SSJ100)が緊急着陸後に炎上し、搭乗していた78人のうち41名もの尊い命が失われてしまったのです。現在、当局は操縦士の人的なミスが有力であると見ているものの、機体のシステム上の問題も含めて、事故原因を徹底的に究明している最中であると伝えられています。
この痛ましい事故は、SNS上でも瞬く間に拡散され、特に着陸時の激しい衝撃と炎上の様子を捉えた映像には「恐ろしい」「まるで爆弾が落ちたようだ」といった、悲痛で衝撃的なコメントが多数寄せられました。また、「ロシアの飛行機は大丈夫なのか」といった、国産機に対する安全性への不安を露わにする意見も散見されており、国民の間に広がる動揺の大きさを物語っています。この事故機であるSSJ100は、ソ連崩壊後のロシアで初めて開発されたリージョナルジェット、つまり100席前後の近距離路線向けの小型旅客機として、2011年から航空会社への納入が開始された機体であります。
しかし、実はSSJ100は、2012年にインドネシアで墜落事故を起こして45人が犠牲となった経緯があり、さらには国内でも複数の不具合が報告されてきたという事実があります。今回の事故を受けて、すでに一部の航空会社ではSSJ100の運航を見合わせる動きも見られており、機体そのものに原因がないと判断されたとしても、「ロシア製旅客機は危険である」というイメージが人々の間に根付いてしまえば、これは深刻な事態であると言えるでしょう。
次世代機「MS-21」の命運を握る“信頼回復”の鍵
今、ロシアの航空業界が抱える最大の懸念は、SSJ100の不安が、次期主力機として期待されている中型旅客機MS-21の将来にも暗い影を落とすのではないかという点です。MS-21は、エアバス社のA320型機やボーイング社のB737型機といった、世界の航空市場における「花形」である150〜200席級のナローボディ機(単通路機)市場への参入を目指して、2021年の量産開始を目標に開発が進められています。これは、旧ソ連時代には世界に冠たる存在であった航空産業を、プーチン政権が国主導で立て直しを図るという、いわばロシアの**「航空産業再興」**という国家的な宿願を背負った、極めて重要なプロジェクトであると言えるでしょう。
航空旅客数が堅調に増加し、国内における航空機需要が高まっているにもかかわらず、現在、ロシア最大の航空会社であるアエロフロート航空でさえ、保有する機体の約8割を欧米のエアバスやボーイングの機体が占めているのが実情でございます。この状況を打破し、自国製の航空機で空を飛ぶという「自信」を取り戻すためには、MS-21の成功が不可欠であると私は考えています。しかし、そのためには、単に新しい機体を開発するだけでは不十分で、なによりも先に、今回のSSJ100の事故で揺らいでしまった「安全性」と「信頼性」を、国内外の利用者にしっかりと証明しなければなりません。この信頼回復という試練を乗り越えなければ、ロシアの航空産業再興への道のりは、あまりにも険しいものになってしまうでしょう。
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