【USMCA始動】トヨタも動く!北米自由貿易の新ルールで迫られる日本車の劇的転換

2019年12月13日、北米の経済圏が大きな転換点を迎えようとしています。米国、カナダ、メキシコの3カ国が、これまでのNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新たな協定「USMCA」に合意しました。この新協定は2020年春にも発効する見通しとなり、トヨタ自動車をはじめとする日本の完成車メーカーは、北米全域における供給体制の抜本的な再検討を迫られています。

SNS上では「ついに決まったか」「メキシコ生産のメリットが薄れるのでは?」といった、企業のコスト増や価格転換を懸念する声が多く上がっています。企業にとって最大の敵は、ルールが決まらないことによる「不確実性」です。米国トヨタは今回の進展を歓迎し、議会への早期批准を求める声明を出しました。ルールが明確になったことで、企業はようやく次の一手を打てるようになったのです。

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「原産地比率」の引き上げと高賃金条項の衝撃

USMCAが日本企業に突きつける課題は、主に2つの厳しい新基準に集約されます。1つ目は「原産地比率」の引き上げです。これは製品の価値の何%が域内で作られたかを示す指標で、従来の62.5%から75%へと大幅に引き上げられます。つまり、より多くの部品を北米内で調達しなければ、関税ゼロの恩恵を受けられなくなるという、非常に高いハードルが設定されたのです。

2つ目は、米国への生産回帰を強く促す「労働価値条項」です。乗用車の価値の40%は、時給16ドル(約1700円)以上の工場で生産することが義務付けられました。低賃金が魅力だったメキシコ生産の優位性を抑え、労働コストの高い米国での製造を促す狙いがあります。これらを満たせない場合、カナダやメキシコから米国への輸出には、原則として2.5%の関税が課されることになります。

トヨタと日産が踏み出す米国シフトへの第一歩

トヨタ自動車は、現状の域内調達率が70%程度に留まっており、新基準の75%達成に向けた動きを加速させています。2021年までに合計7億5千万ドルを投じる計画の一環として、日本から輸出していたハイブリッド車用の変速機ユニットなどを米国で増産する方針です。地産地消を強めることで、関税リスクを回避しつつ、トランプ政権が求める雇用創出にも応える狙いが見て取れます。

日産自動車も、日本から北米へ輸出していたエンジンの供給体制を見直す検討に入りました。2020年にも高級SUV「QX50」向けのエンジンを米国で生産開始し、現地調達率を高める構えです。これまでは「メキシコで安く作り、巨大な米国市場へ流す」という仕組みが勝利の方程式でしたが、その大前提が崩れた今、日本の自動車産業は北米全域を一つの巨大な工場として捉え直す必要に迫られています。

部品・素材メーカーを襲う供給網の再編ドミノ

この影響は完成車メーカーだけではありません。ホンダ系のショーワは、メキシコにある電動パワーステアリングの生産設備を米国へ移管する検討を始めています。一方で、東レのように供給網が複雑な素材メーカーからは、「生産地を簡単には変えられない」という戸惑いの声も漏れています。エアバッグ用の繊維などは多くの工程を経るため、供給網全体のバランスを見極めるには時間がかかるでしょう。

筆者の視点としては、今回のUSMCAは単なる貿易協定の更新ではなく、北米における「保護主義的な自由貿易」の完成形だと感じます。効率性を追求した「グローバル・サプライチェーン」は、いまや政治的な枠組みに縛られる「リージョナル(地域的)な供給網」への変容を余儀なくされています。日本企業は、コスト競争力だけでなく、地政学的な変化に即応できる柔軟な経営力が今まさに試されているのです。

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