2019年12月20日、C Channelの代表取締役である森川亮氏が、韓国IT市場の驚異的な熱気と、日本企業が抱くべき危機感について語りました。森川氏は日本の経営者仲間とともに、韓国を代表するテック企業を直接訪問しています。そこで目にしたのは、最初から国内という小さな枠を飛び越え、世界を舞台に戦うことを前提とした「ボーン・グローバル」な起業家たちの姿でした。
初日に訪れたのは、メッセージアプリで知られる「カカオトーク」です。創業者である金氏との対話を通じ、森川氏は韓国の経営者たちの視座の高さに圧倒されたといいます。韓国市場は規模が限定的なため、多くの若者が留学経験を活かし、最初から海外で起業することを選んでいます。SNSでは「日本の内向き志向とは対照的だ」「このハングリー精神は見習わなければならない」といった、共感と焦燥の入り混じった声が数多く寄せられていました。
特に目立つのは、技術に精通したエンジニア出身の経営者が、海外を拠点に開発から起業までをワンストップで行うケースです。こうした野心的なベンチャーに対し、従来は韓国国内の資金が中心でしたが、2019年現在は外資系のベンチャーキャピタルも熱烈な視線を注いでいます。ベンチャーキャピタルとは、高い成長性が見込まれる未上場企業に出資し、その成長を支援する投資会社を指しますが、世界中の資本が今、韓国へと集積しつつあるのです。
デジタルエンタメの新旋風「ウェブトゥーン」の衝撃
続いて一行は、エンターテインメントの雄である「KAKAO M」や「NAVER」を訪れました。韓国では地上波放送よりもネットドラマが主流となっており、すでにネット制作の「ユニコーン企業」も誕生しています。ユニコーン企業とは、企業価値が10億ドルを超える設立10年以内の未上場スタートアップを指す言葉ですが、韓国のエンタメ業界はこの領域で他を圧倒するスピード感を見せているようです。
特筆すべきは、デジタル漫画市場を席近する「ウェブトゥーン」の存在でしょう。スマートフォンでの閲覧に特化した縦読み形式の漫画は、すでに世界ナンバーワンの地位を確立しています。プラットフォーム側が自動翻訳機能を活用し、各国の人気コンテンツをグローバルに展開する仕組みを構築している点には驚きを隠せません。日本は長らく漫画・キャラクター大国と自負してきましたが、このままではその優位性すら揺らぎかねない状況でしょう。
今後はデジタル漫画から派生したIP展開が加速すると予想されます。IPとは「知的財産」を意味し、漫画のキャラクターや物語をゲームや映画などに多角化して収益を生む権利のことです。中国企業のゲーム開発力が向上する中で、韓国はコンテンツの源泉を握ることで対抗しています。森川氏は、このデジタルエンタメの劇的な変化に対し、日本がいつまで「原作大国」として君臨できるのか、強い懸念を表明されています。
日本のベンチャーが再び世界から注目されるために
さらに森川氏は、韓国の女性向けビューティーやECベンチャーとの会食を通じ、最新のトレンドを肌で感じました。「Zigzag」や「StyleShare」といったサービスは、インフルエンサーとの連携やユーザー生成コンテンツ(UGC)を巧みに活用し、SNSのようなインターフェースで購買意欲を高めています。UGCとは一般ユーザーが作成したコンテンツのことで、広告よりも信頼性が高いとされる現代マーケティングの要石です。
中国で先行していた「ライブコマース」などの流行が、着実に韓国へも波及していることが見て取れます。対して日本は、新しい仕組みを取り入れるのに時間を要する傾向があるのは否めません。しかし、一度定着すれば長く愛されるという特長も持っています。大切なのは、まずは体験してみることではないでしょうか。実際に触れてみなければ、そのサービスの真価やユーザーの熱狂を理解することは難しいはずです。
かつて日本の消費者向け企業は、その品質とアイデアで世界を虜にしました。今の日本に必要なのは、次世代を担うベンチャー企業が勇気を持って海を渡り、再びグローバル市場で挑戦する文化を取り戻すことでしょう。森川氏のメッセージは、変化を恐れず外の世界へ飛び出すことこそが、日本経済の再生に向けた唯一の処方箋であることを、私たちに強く訴えかけています。
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