2019年12月26日、北関東の金融業界に注目が集まっています。栃木、群馬の両県に拠点を置く22の信用金庫と信用組合における2019年4月1日から2019年9月30日までの決算が出揃いました。驚くべきことに、全機関の約7割にのぼる16の金庫・組合が、本業の収益力を示す「実質業務純益」で増益や黒字転換を達成しています。長引く低金利という逆風の中でも、地域金融の底力が垣間見える結果となりました。
そもそも「実質業務純益」とは、一般企業の営業利益に相当する指標で、預金の利息と貸出金の利子の差(利ざや)や手数料から、人件費などの経費を差し引いたものです。SNS上では「地銀が厳しい中で信金が健闘しているのは意外」といった驚きの声も上がっています。しかし、その内実を詳しく見ていくと、融資による利息収入だけで稼ぎ出しているわけではなく、各機関が苦心の末に編み出した「運用の工夫」が大きく寄与しているのが分かります。
今回の好成績を支えたのは、主に保有していた国債や投資信託、さらには上場不動産投資信託であるJ-REITの売却益です。例えば栃木県の烏山信用金庫では、含み益のあった投資信託を売却したことで、実質業務純益が前年同期比で約3.3倍という驚異的な伸びを記録しました。こうした資産運用の機転に加え、定年退職に伴う職員数の適正化といった「コスト削減」も、利益を押し上げる重要な要因となったようです。
見え隠れする経営の厳しさと「不良債権」の足音
一方で、手放しで喜べない現実も浮き彫りになっています。最終的な儲けを示す「純利益」で見ると、半数を超える金融機関が減益、あるいは赤字に陥っているからです。その大きな要因となっているのが、取引先の経営悪化に備えるための「不良債権処理損失」の増加です。これは貸したお金が返ってこなくなるリスクに備えて、あらかじめ損失として計上する費用のことですが、この負担が各機関の経営に重くのしかかっています。
那須信用組合の事例では、取引先の経営破綻などが影響し、多額の処理損失を計上した結果、2019年9月中間決算で赤字転落を余儀なくされました。2020年3月期の通期決算でも厳しい見通しが続いています。ネットでは「地域の企業が苦しめば、支える金融機関も共倒れになりかねない」と、地元経済の先行きを危惧する意見が散見されます。倒産件数自体は低水準ですが、景気の不透明感は確実に増していると言えるでしょう。
編集者の視点として付け加えるならば、現在の北関東の金融機関は、まさに「薄氷を踏む」ような経営を強いられていると感じます。日銀のマイナス金利政策によって、本業である融資での利ざや稼ぎは限界に近づいています。資産運用や経費削減で一時的に利益を確保できても、地域経済が冷え込み、中小企業の倒産が増えれば、その衝撃は計り知れません。今後は単なる資金供給を超えた、地元の経営支援能力が問われることになるはずです。
コメント