【企業戦略の要】「スキルマトリックス」が変える取締役会!ブリッジウォーター流「野球カード」に学ぶ適材適所の重要性

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオ氏は、その著書『人生と仕事の原則』の中で、独自の組織論を展開しています。この中で登場するのが、人材を能力別に可視化する「野球カード」という概念です。これは、かつてお菓子のおまけとして人気だった、プロ野球選手の写真と成績が記載されたカードをイメージすると分かりやすいでしょう。カード一枚で選手の能力が一目瞭然となるように、ダリオ氏は、従業員一人ひとりの強みや弱み、それを裏付ける具体的なエピソードを簡潔に把握できるシステムを構築したのです。このシステムは、個人の意見の適正を判断したり、仕事との最適なマッチングを図るために活用されているといいます。

このダリオ氏の組織論に通じる発想が、日本の株主総会のあり方にも表れ始めています。株主総会が終盤を迎えるこの時期、企業が株主へ送付する招集通知を見ると、「スキルマトリックス」を取締役候補者の情報に盛り込む事例が急増しているのです。スキルマトリックスとは、取締役候補者が持つ経験や専門性を一覧表にしたもので、取締役会の多様な能力構成を株主に対して明確に示すためのツールといえるでしょう。

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多様な視点を持つ取締役会へ!エーザイに見る布陣の具体例

例えば、2019年6月の株主総会でスキルマトリックスを導入したエーザイの事例を見てみましょう。同社は、縦軸に候補者名、横軸に「企業経営経験者」「財務会計専門家」「法律専門家」「学識経験者」「ジェンダー・国籍」という期待されるスキル項目を並べています。これは、様々な専門性を持つ人材を結集し、多角的な視点から経営トップを監督する、まさに「取締役会の陣形」を整えることを意味します。野球というスポーツが、9人の選手がそれぞれのポジションをしっかりと守り、連携することで勝利を目指すように、取締役会もそれぞれの専門性を活かして企業経営を成功に導くための布陣なのです。この発想は、まさにダリオ氏が提唱する「野球カード」と同じく、個々の能力を明確にして適材適所を追求することにあります。

スキルマトリックスの項目立てには、その企業が戦略上、何を最も重視しているかが色濃く反映されます。企業によっては「企業買収(M&A)」や「新技術(テクノロジー)」といった項目を重視する場合もあるでしょう。株主にとっては、この一覧表を通じて、取締役会の構成に能力的な「穴」がないか、また、それぞれのポジションに適切な人材が配置されているかをチェックするための重要な材料となります。これは、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の透明性を高める上で非常に有益な動きであるといえるでしょう。

「プロフェッショナルな取締役」に求められる役割と期待

もちろん、ただ社外取締役を増やせば良いというわけではありません。世の中には「働かざる社外取締役」の問題が指摘される一方で、会社側からは「気負いすぎた社外取締役が、よく理解しないままに細部に口出ししすぎる」という本音も聞かれます。しかし、取締役もまた、その職責においてプロフェッショナルであるべきです。彼らに求められるのは、企業が描く戦略のもと、最適な人材が最高のパフォーマンスを発揮できるような布陣を敷き、それを効果的に機能させることでしょう。取締役会の布陣が明確な戦略に基づいて構築されたとき、初めてその機能は本当の意味で活かされるのです。SNSなどでは、この動きに対し、「上場企業では当たり前の開示になってほしい」「形骸化しないよう、具体的な活動内容の開示も必要」といった、期待と更なる透明性を求める声も上がっているようです。

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