タイのビーチリゾートとして有名なパタヤで、世界中から熱い視線を集める次世代型フェスティバルが開催されました。2019年12月にタイ国政府観光庁の招待を受け、現地を訪れる機会に恵まれたのです。世界各国のメディアやインフルエンサーが集結する中、お目当てはアジア最先端と噂される「Wonderfruit(ワンダーフルーツ)」でした。まだ歴史は浅いものの、非常にユニークな試みを行っているという評判を耳にしていたため、期待に胸を膨らませて会場へと向かいました。
会場の門をくぐると、すぐに独自の厳格なルールに驚かされることになります。なんとプラスチック類の持ち込みが一切禁止されており、ペットボトルはすべて入り口で回収される仕組みでした。さらに、場内は完全なキャッシュレス決済が標準となっています。ステージのきらびやかな装飾から飲食に使う食器に至るまで、すべてのアイテムに再利用可能な素材が採用されていました。徹底した環境への配慮が、空間全体からダイレクトに伝わってきます。
ドリンクを購入する際にも、あらかじめマイカップを持参するか、現地で販売されている専用カップを手に入れなければならない仕組みです。アートや音楽、グルメにウェルネスなど、多彩な体験を網羅するこのイベントの根底にあるのは「サスティナビリティ」という思想にほかなりません。これは地球環境を壊さず、未来へ向けて持続していける社会を目指す考え方です。これほど徹底した姿勢は、日本のフェスも見習うべき素晴らしい挑戦だと感じます。
SNS上でも「これからの時代のフェスのあり方を示している」「不便さすらもおしゃれな体験に変わる」といった称賛の声が相次いでおり、トレンドに敏感な若者たちの間で大きな反響を呼んでいます。これほど大規模なイベントを維持するにはスポンサーの存在が不可欠ですが、驚くべきことに会場内には企業の広告看板が一切見当たりません。商業的な雰囲気をあえて排除することにより、世界観を守るブランディングが徹底されているのでしょう。
入場料は1日券で日本円にして約1万7000円と、現地の物価水準から考えるとかなり高額な設定です。そのためか、来場者の過半数は欧米からの観光客という印象を受けました。このフェスを立ち上げたピート氏は、現地の高名な財閥であるサイアム・モータース一族の3代目だそうです。世界中の主要なイベントを巡った彼が、自らの理想を具現化した空間なのでしょう。アートの力でクリエイティブな社会変革を促したいという強い意志が言葉の端々から滲んでいました。
常に現実的な妥協点を探しがちな私たち現代人にとって、一切の妥協を許さないワンダーフルーツの姿勢は新鮮な刺激に満ちています。単なる娯楽の場を超えて、参加者一人ひとりの生き方や環境意識をアップデートさせてくれる、まさに得難い体験となるでしょう。フェスというエンターテインメントを通じて社会をより良く変えていく試みは、今後アジア全体、そして世界中へと確実に広がっていくに違いありません。
コメント