好調を維持してきたアメリカの株式市場に、突如として冷や水が浴びせられました。2020年01月24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均は4日連続で値下がりし、一時は下げ幅が300ドルを超える急落となったのです。2019年08月前半以来、約5カ月半ぶりとなるこの連落は、これまでの上昇基調に慣れきっていた市場に大きな衝撃を与えました。SNS上でも「ついに調整局面が来たか」「ここが買い場か、それとも暴落の始まりか」といった不安の声が錯綜しています。
今回の急落の引き金となったのは、アメリカ国内で2人目となる新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が確認されたという報道です。これにより、中国市場への依存度が高い大手建設機械メーカーのキャタピラーなどの銘柄を中心に、売り注文が殺到することになりました。投資家のリスク回避姿勢は株式市場にとどまらず、原油先物市場の急落や、安全資産とされる債券市場への資金流入を招いています。その結果、長期金利は約3カ月ぶりの低水準まで低下する事態となりました。
市場ではかねてより株価の割高感が指摘されていましたが、世界的な金融緩和の波に乗って上昇が続いていました。しかし、この「カネ余り」による安心感が、結果として投資家の慢心を生んでいたと言わざるを得ません。ヘッジファンドや個人投資家の買いポジションが歴史的な高水準に膨らむなか、新型肺炎という予測不能なリスクが浮上したことで、蓄積されていた売り圧力が一気に噴出した形です。投資家たちが一斉にリスクオフへ舵を切ったのが、この日の相場の真相でしょう。
投資家の油断を如実に示していたのが、歴史的な低水準にあった「恐怖指数」ことVIX指数です。これは株価の先行きに対する変動予測を示す指標ですが、これに加え、過去の株価データから算出する「ヒストリカル・ボラティリティー(歴史的変動率)」も過去最低水準にまで低下していました。中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)の低金利政策が、市場のリスク感知能力を麻痺させ、株価が実力以上に買われすぎる歪んだ状況を作り出していたと考えられます。
さらに、株価下落に備える保険である「プット(売る権利)」の取引量が「コール(買う権利)」に対して極端に減少する、プット・コール・レシオの低下も観測されていました。誰もが「まだ上がる」と信じて疑わなかったこの状況こそが、最大の危機だったのです。私個人の見解としても、過剰流動性に依存した相場は一度崩れると脆く、2020年02月に向けてさらなる自律調整が続く可能性は否定できません。投資家は、今一度足元のリスクを見つめ直すべきでしょう。
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