大学サッカー界で圧倒的な実績を誇る明治大学体育会サッカー部。2020年01月28日現在、Jリーグで活躍する同部出身のプレーヤーは50人を超えており、まさに日本サッカー界の梁山泊といえる存在です。しかし、2015年度から指揮を執る栗田大輔監督は、大学を単なる「プロの養成所」とは捉えていません。栗田監督が最も重きを置いて止まないのは、サッカーを通じた「人間形成」の場としての役割です。
1970年09月生まれの栗田監督は、名門の静岡県立清水東高等学校で活躍後、明治大学へ進学しました。卒業後は大手ゼネコンの清水建設株式会社へ入社し、30代後半には役員秘書という重責を担った異色の経歴を持ちます。このビジネス最前線での経験こそが、現在の指導方針の強固な基盤となりました。大企業での組織マネジメントや、数多くの取引先に影響を及ぼす決断力を間近で学んだことが、現在のチーム作りに活かされています。
SNS上では「ビジネスの視点を持った指導者だからこそ、言葉の重みが違う」「就職活動をさせる理由に納得した」と、その独自の育成論に感銘を受ける声が続出しています。一般的な体育会系の枠に収まらない栗田監督のアプローチは、サッカーファンのみならず、教育関係者やビジネスパーソンからも熱い視線が注がれているのです。プロへ行く部員も含めた全員に就職活動を推奨する方針も、この経験から生まれました。
あえて厳しい社会の現実に触れさせることで、自分自身の現在地を客観的に見つめ直すきっかけになります。元々は一般企業への就職を視野に入れていたディフェンダーの中村帆高選手も、企業との面談を重ねる中で社会におけるサッカー選手の存在意義を深く考究したといいます。結果としてプロとしての覚悟が定まり、FC東京への加入を決断することに繋がりました。狭い世界に閉じこもらず、広い視野を持つことが成長を促すのでしょう。
さらに合宿所へ様々な分野の社会人を招き、知見を広げる講演会も定期的に開催されています。過去には、南アフリカにおける発電所建設のプロジェクトに携わったビジネスパーソンの貴重な体験談が語られました。一見するとサッカーとは無関係に思えるお話ですが、これらが選手たちの思考を柔軟にし、豊かな人間性を育む養分となっています。自ら主体的に考え、行動できる自立した大人になるための素晴らしい取り組みです。
これまでの常識に囚われない、一風変わったクロストレーニングも実施されています。例えば、1年生で198センチメートルの長身を誇るフォワードの赤井シャロッド裕貴選手は、2019年06月から週に1回、ラグビー部の過酷なフィジカルトレーニングへ参加してきました。大柄な体格を最大限に活かしきれていないという課題に対し、栗田監督が「4年計画で大器に育て上げたい」という並々ならぬ期待を込めて考案した秘策です。
当初は戸惑いを見せていた赤井選手ですが、他競技の刺激によって驚くべき変化を実感し始めました。ラグビーの激しいコンタクトを通じて、倒れてから素早く起き上がるスピードが向上し、対人局面で競り負けない強靭な肉体が磨かれています。これには栗田監督も「バレーボール部の練習への参加も検討したい」と冗談を交えるほどで、型にはめない柔軟な発想こそが、選手の潜在能力を開花させる鍵なのだと痛感させられます。
「明治発 世界へ!」という力強いスローガンには、栗田監督の壮大なロマンが込められているに違いありません。もちろん卒業生がワールドカップなどの大舞台や海外リーグで躍動することは喜ばしいですが、真の狙いはそれだけではないのです。ここで培った人間力を武器に、あらゆる分野の第一線で社会を牽引するリーダーが育つことこそ、大学スポーツがあるべき究極の姿であり、日本の未来を明るく照らす光になると私は確信しています。
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