デジタルトランスフォーメーション、いわゆる「DX」という言葉がビジネスの現場を駆け巡る2019年12月03日現在、多くの企業がデータの海に漕ぎ出しています。しかし、多額の投資をしたにもかかわらず「期待したほどの成果が得られない」という悲鳴に近い声も少なくありません。個別の分析作業をこなすことに忙殺され、将来を見据えた基盤整備が置き去りになっている現状は、まさにDXの迷路と言えるでしょう。
SNS上でも「現場の無茶振りに疲弊している」「データはあっても使い道が決まっていない」といった、現場担当者の切実なつぶやきが目立ちます。こうした課題を打破するために今、注目されているのが「業務プロセスの再構築」です。依頼を受けてから結果を提供するまでのフローを可視化し、優先順位を明確にすることで、迷走するプロジェクトに一本の筋を通すことが可能になります。
失敗を防ぐための「着手基準」という防波堤
データ分析を成功させるための第一の鍵は、作業を開始する前の「着手基準」を明確にすることにあります。ここで言う着手基準とは、分析に必要なデータが揃っているか、期間や工数は適切かといった条件を、依頼側と提供側の双方が事前に合意する仕組みのことです。要件が曖昧なまま走り出してしまうと、最終的に「思っていたのと違う」という結末を招き、コストばかりが膨れ上がってしまいます。
あらかじめプロトタイプ(試作品)を作成し、実現可能性を見極めることも賢い選択と言えるでしょう。デロイト トーマツ グループの三木聡一郎氏も指摘するように、入り口での精査を怠らないことが、結果的に最短ルートで成果を出す近道となります。データ活用を単なる「作業」ではなく「投資」として捉える視点が、現代のマネジメント層には強く求められているのではないでしょうか。
提供者と受益者の対話が競争力を生む
第二のポイントは、案件の優先度を決定するルールの策定です。ビジネス現場の受益者は時に高度で複雑な要求を投げかけますが、一方でシステム側の提供者は技術的な実装に終始してしまいがちです。ここで重要なのは、双方が膝を突き合わせ、その案件がどれだけの価値を生むのか、そして実現可能なのかという両面から冷静に議論を重ねることです。
私は、この「対話」こそがDXの本質だと考えます。日本企業は本来、現場のすり合わせや連携を得意としてきたはずです。短期的な成果を狙う案件と、中長期的な基盤作りを目的とする案件を切り分け、戦略的にリソースを配分しましょう。目先の忙しさに追われる中であっても、一度立ち止まってプロセスをデザインする時間を作ることが、データを企業の強力な武器に変える唯一の方法なのです。
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