プラスチック製品などの基礎となる代表的な化学原料「エチレン」のアジア市場価格に、底打ちの兆しが見え始めています。これまで世界のエチレン需要は、年間でおよそ600万トンという非常に堅調なペースで拡大を続けてきました。しかし、足元では原材料である「ナフサ(原油を蒸留して精製される未加工のガソリン成分)」の価格高騰を背景に、各メーカーが生産を抑える減産に踏み切ったことで、スポット価格(その都度取引される随時価格)の急落に歯止めがかかりつつある状況です。
この市場の動きに対し、インターネット上のSNSでは「身の回りのプラスチック製品の値上がりに直結するのではないか」と懸念する声が上がっています。その一方で「世界的な景気のバロメーターとして今後の化学品価格を注視したい」といった、経済トレンドとしての関心の高さも窺えました。需要の伸びに対して市場がどのように反応していくのか、多くの業界関係者や投資家たちがその一挙手一投足に熱い視線を注いでいるのは間違いありません。
米中による大増産時代が幕開け!供給過剰がもたらす価格のジレンマ
コスト高による下げ止まりが見られるものの、市場の上昇基調はそれほど強くないとする見方が根強く存在しています。なぜなら、2020年にはアメリカと中国の二大国を中心に、年間需要の伸びを遥かに上回る1400万トンもの大規模な生産能力の増強が計画されているからです。専門家からも「アメリカ発の強力な価格引き下げ圧力が、アジア市場に向けてさらに強まるリスクがある」との鋭い指摘がなされています。
特にアメリカでは、従来の石油由来ではなく、安価な天然ガスから抽出される「エタン」を原料とした最新プラントが次々と稼働を迎えています。これにより、エチレンやそれを加工して作られるプラスチックの代表格「ポリエチレン(レジ袋や容器に広く使われる合成樹脂)」の生産能力が爆発的に拡大中です。余剰となったアメリカ産のポリエチレンがアジア市場へ大量に流れ込むことで、製品価格が押し下げられ、結果としてエチレン自体の価格も上値を抑えられるという連鎖が予想されます。
さらに市場を揺るがす大きな要因として、2019年12月にはアメリカ国内で新しいエチレン専用の輸出基地が本格的に稼働を開始しました。これによって、これまで以上に大量のエチレンがアジア市場へ直接輸出される物理的な環境が整ったと言えるでしょう。コスト高による下支えと、米中発の圧倒的な供給ラッシュという二つの相反する力が激しくぶつかり合う、極めてダイナミックな局面を迎えています。
編集部EYE:技術革新の光と影、日本の化学産業が歩むべき道
今回のアメリカによる「エタン革命」とも言える増産劇は、安価な天然ガスを利用できる強みを最大限に活かした驚異的なパラダイムシフトです。しかし、この圧倒的な物量作戦はアジア全体の市場バランスを崩しかねず、日本の化学メーカーにとっても極めて大きな脅威になると私は考えています。単なる価格競争に巻き込まれないためにも、今後は環境に配慮した高付加価値な素材開発へのシフトなど、日本独自の生存戦略が強く求められるでしょう。
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