2019年6月上旬、日本政府は認知症対策の国家戦略となる「認知症対策大綱」を策定しようとしていますが、当初案に盛り込まれていた発症予防に関する数値目標を取り下げることが決まり、大きな注目を集めています。この決定は、病気のメカニズムがまだ完全には解明されておらず、診断自体も難しいという現状を鑑みれば、極めて妥当な判断と言えるでしょう。私たちは、拙速を避けて科学的根拠に基づいた、より丁寧な予防策の推進こそが不可欠だと強く提言します。
日本における認知症患者の数は、高齢化の進展に伴い増加の一途をたどっています。2012年時点では65歳以上の約7人に1人だった患者の割合が、2025年には約5人に1人にまで上昇するとの推計も存在するほどです。これは、ご本人やご家族の生活に深刻な影響を及ぼすだけでなく、医療費や介護費を押し上げる主要な要因にもなりかねません。それゆえに、この大綱は、患者さんが周囲の人々に温かく受け入れられ、尊厳をもって生活できる**「共生」と、医療費などの抑制につながる「予防」**を対策の二本柱としています。
当初の草案では、対策の達成度を測るため、「70代における認知症の発症を10年間で1歳遅らせる」という数値目標が設定されていました。これは、患者の比率を6年間で6%削減することに相当するとされていましたが、発表されるや否や、専門家や患者会などから批判の声が数多く噴出しました。私の個人的な意見としても、これは非常に危険な目標設定だったと考えます。このような無理な目標は、「認知症になったのは予防への努力が足りなかったせいだ」と患者さんが不当に非難される状況を生み出しかねず、さらには根拠のない怪しげな治療法が蔓延する懸念すらあったからです。
現在、画像診断の技術向上により、アルツハイマー病などの初期段階を検出することは可能になりつつありますが、発症を根本的に食い止める画期的な治療薬の開発は、依然として難航しています。バランスの取れた食事、十分な睡眠、そして適度な運動が、認知症になりにくくしたり、その進行を遅らせたりする可能性があるという研究報告も出ており、今後のさらなる研究成果には大いに期待できます。しかし、現時点では「これをすれば絶対に予防できる」と断言できるほどの明確な因果関係を示すデータは十分に揃っていないのが現状なのです。
🔢 数値目標を設けない先進事例と国際的な連携の重要性
早くから認知症対策に取り組んでいる英国では、発症数などに関する数値目標の設定を避けるアプローチを取ってきました。その代わりに、症例データや臨床試験の結果などを精力的に集約し、常に最新の科学的知見を対策に反映できる体制づくりに重点を置いているそうです。この英国の事例は、認知症予防においては、性急な数値目標よりも、堅実な科学的基盤の確立が重要であることを示唆していると言えるでしょう。
SNS上でも、この数値目標の撤回については「当然の判断」「プレッシャーが減って良かった」といった安堵の声が散見され、患者さんやご家族の気持ちに寄り添った対応を求める意見が多いようです。認知症は、誰でも罹患する可能性のある、多くの国に共通する普遍的な課題です。今後は、国際的な研究協力を加速させるとともに、患者さんやご家族が精神的に安心して暮らせる社会を築くための知恵を、世界規模で共有していくことが極めて重要となるでしょう。
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