2019年5月14日、長崎地方裁判所がある一人の男性を「被爆者」と認める重要な判決を下しました。その男性とは、2011年に81歳でこの世を去った上戸満行さんです。しかし、その認定までの道のりには、行政によるあまりにずさんな対応という悲しい壁が立ちはだかっていました。同年5月27日、長崎市への取材で、過去の申請時に市が重大な見落としをしていた事実が明らかになったのです。
上戸さんは生前の2008年7月、被爆者健康手帳の交付を求めて市に申請書を提出していました。その書類には、原爆投下後に救援などで被災地に入り放射能の影響を受けた「入市被爆」をした、という記述がありました。ところが、この大切な記述の一部にはなぜか斜線が引かれていたのです。取り消された理由は今となっては分かりません。
問題なのは、ここからの市の対応です。別のページにはハッキリと「入市被爆」の事実が残っていたにもかかわらず、市は上戸さん本人に直接事情を聞き取るなどの調査を一切行わず、申請を門前払い同然に却下してしまったのです。市の担当者は「(斜線があったため)入市被爆ではなく、直接被爆としての申請だと判断した」と釈明しましたが、あまりに形式的すぎる対応と言わざるを得ません。
この冷たい行政の態度に対し、SNS上では「目の前の書類だけでなく、人の人生を見てほしい」「生きて認定されたかっただろうに無念すぎる」といった、憤りと悲しみの声が溢れました。斜線一本で消されてしまいそうになった真実を、司法がようやく救い上げた今回の判決。二度と同じ悲劇を繰り返さないためにも、行政には申請者の声なき声に耳を傾ける姿勢が強く求められるでしょう。
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