「友人のネットワークから未公開株の誘いが頻繁に届く」と語るのは、金融業界からベンチャーの世界へ飛び込んだ山岡和彦さん(仮名)です。2019年12月06日現在、起業ブームの加速とともに、設立直後の「シード」や、事業が軌道に乗り始めた「シリーズA」といった段階の未公開企業へ資金を投じる動きが活発化しています。
ここで使われる「シード」とは、種を蒔く時期のようにビジネスモデルが固まる前の初期段階を指し、「シリーズA」は製品が完成し本格的な事業展開を目指すフェーズのことです。かつては成功を収めた起業家たちが「エンジェル投資家」としてこの役割を担ってきましたが、最近では金融リテラシーの高い新富裕層もこの流れに合流しています。
SNS上では「夢がある一方で、一般人には情報の壁が高すぎる」「結局は人脈勝負なのか」といった、投資機会の格差に対する嘆きや羨望の声が散見されます。山岡さんは、ネットでの情報収集や信頼できる友人関係を通じてリスクを管理していますが、それでも200件の案件から厳選して1、2件に乗るかどうかという非常に慎重な姿勢を崩しません。
一方で、強力なコネクションを持たない個人投資家にとって、この世界は極めて閉鎖的です。9社に約2億円を投じる依田泰典さんは、有力な情報を共有し合う「インナーサークル」へ潜り込むことの難しさを強調しています。機関投資家との競争も激しく、個人が参入するには非常にリスクの高い超初期段階で勝負せざるを得ないのが現状です。
投資家を惹きつけてやまないのは、何と言ってもその圧倒的な収益性でしょう。2019年に入ってから新規株式公開(IPO)した銘柄の初値は、公開価格を平均で7割近くも上回っています。未公開の段階で出資していれば、資産が数十倍に膨らむことも珍しくなく、この「無限の伸びしろ」こそが投資家を突き動かす原動力となっています。
巨大未公開企業「ユニコーン」の虚像と実像
企業価値が10億ドルを超える未公開企業は「ユニコーン」と呼ばれ、投資家にとっての憧れの象徴です。これまでは個人での出資が困難だった海外のユニコーン企業に対し、HiJoJoパートナーズのように大口投資家向けに販売を行うサービスも登場し、電動スクーターシェア大手のバード株には短期間で多額の資金が寄せられました。
しかし、この熱狂の裏には危うさも潜んでいます。かつてユニコーンの代表格ともてはやされた米シェアオフィス大手ウィーカンパニーの評価額が暴落したことは、市場に冷や水を浴びせました。未公開株は上場企業のような厳格な「ガバナンス(企業を監視する仕組み)」が整っておらず、詐欺まがいの案件も後を絶ちません。
現在の低成長経済において、一獲千金の夢を追い求める投資家心理は理解できますが、私はこの「インナーサークル」の熱狂に強い危惧を覚えます。情報の非対称性を利用した取引は、一歩間違えればバブルの崩壊を招きかねません。選ばれた人間だけが手にできるチャンスという優越感が、冷静な判断を狂わせているのではないでしょうか。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏は「ポーカーを始めて30分経っても誰がカモか分からなければ、自分がカモだ」という格言を引いています。情報の透明性が低い未公開株市場において、自分が「カモ」になっていないかを見極めるのは至難の業です。輝かしい成功物語の影にある、深い闇を直視する勇気が今こそ求められています。
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