愛する家族をがんで亡くした後、激しい自責の念や喪失感に苛まれる方は少なくありません。「もっと早く病院へ連れて行けばよかった」という後悔の念が、時として遺族自身の心身を蝕んでしまうことがあります。こうした状況に置かれた家族は、今や医療現場で「第二の患者」と呼ばれ、そのケアの重要性が急速に注目されています。単なる悲しみを超えた心の痛みは、放置せずに専門的な手助けを求めることが、再生への第一歩となるのです。
2019年11月20日現在、精神的なダメージをケアする「遺族外来」が大きな支えとなっています。例えば埼玉医科大学国際医療センターでは、夫を亡くした喪失感から仕事を辞めるほど落ち込んだ女性に対し、専門医が対話を通じて寄り添っています。ネット上でも「周囲の『子供がいるから大丈夫』という励ましが逆に辛かった」という声が多く見られますが、専門外来はそうした「孤独な悲しみ」を否定せず、ありのままに受け止めてくれる貴重な場所なのです。
グリーフケアとは?専門家が自宅を訪問する新たな支援の形
ここで重要なキーワードとなるのが「グリーフケア」です。これは、身近な人と死別した際に湧き上がる深い悲しみ(グリーフ)に対し、周囲が寄り添い、その人が再び立ち上がるのを助けるサポートを指します。富山県の上市町にある、かみいち総合病院では、在宅で看取りを終えた遺族を医師や看護師が訪ねる「訪問ケア」を実施しています。医療者が「一緒に最期を看取った仲間」として共感を示すことで、遺族の迷いや後悔を解きほぐしているのです。
SNSでは「病院との縁が切れた後の孤独が一番怖い」という意見が散見されますが、こうした継続的な関わりは、遺族にとって大きな救いとなります。一方、神奈川県立がんセンターの遺族会「たんぽぽの会」のように、同じ境遇の人たちが集まる場も増えています。2002年の発足当初よりも開催回数を増やしている背景には、大切な人を失った辛さを共有し、励まし合いたいと願う切実なニーズがあるからに他なりません。
子供たちの心を守るプログラムと「複雑性悲嘆」への警鐘
大人のみならず、親を亡くした未成年の子供たちへのケアも急務です。NPO法人「AIMS」では、遊びを通じて悲しみを表現するプログラムを行い、幼い子供たちが感情を整理する手助けをしています。若くして亡くなる患者には小さな子供がいるケースも多く、世代を超えた心のサポート体制が求められています。悲しみは決して一人で抱え込むべきものではなく、社会全体で支えるべき課題であると私は強く感じます。
国立がん研究センターが2016年に実施した調査によると、死別から1年以上経っても17%の遺族が抑うつ状態にあり、日常生活に支障をきたす「複雑性悲嘆」に陥る割合は26%にも上ります。これは、時間が解決するという考えだけでは不十分であることを示しています。編集者の視点としても、身体の病気と同じように、心の傷にも「早期治療」という概念が必要だと考えます。専門家の力を借りることは、決して弱さではないのです。
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