挫折から東大、そして上場へ。エアトリ創業者・吉村英毅氏が語る「大阪星光学院」の懐の深さと起業の原点

航空券予約サイト「エアトリ」を運営する株式会社エボラブルアジア。その創業者である吉村英毅社長の歩みは、決して平坦なエリート街道だけではありませんでした。大阪の名門、大阪星光学院での日々は、一見すると華やかな成功譚の裏にある、人間味あふれる葛藤に満ちていたのです。吉村氏は当時を振り返り、自らが優等生とは程遠い存在であったことを明かしています。

転機が訪れたのは中学2年生の頃でした。仲間とバンドを組み、ドラムやキーボードに熱中した吉村氏は、次第に街での遊びに魅了されていきます。髪を染め、校則に背き、学校を休みがちになる日々。2019年12月10日現在の視点から見れば、現在の成功は想像もつかないほど、高校1年生の終わりには学年で最下位に近い成績まで急降下していたといいます。

そんな彼を救ったのは、母校の圧倒的な抱擁力でした。規律を重んじるカトリック系の進学校でありながら、先生方は吉村氏を「一人の人間」として尊重し続けました。叱られながらも、決して停学や退学という手段で排除しなかったのです。SNS上でも「これこそが真の教育の懐の深さだ」と、厳格さと愛情を併せ持つ学校の姿勢を称賛する声が多く寄せられています。

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偏差値の底から東大合格へ、驚異の集中力と「学ぶ楽しさ」

高校2年生の夏、吉村氏は自身の将来を見据えて大きな決断を下します。ビル・ゲイツ氏への憧れから抱いた「起業」という夢、そしてそのための「東大合格」という目標です。黒髪に戻した姿を見た周囲は、彼が本気で自分を変えようとしていることを察しました。そこからの追い上げは凄まじく、誰よりも長く、そして深く机に向かう日々が始まりました。

吉村氏が素晴らしいのは、この猛勉強を「苦行」ではなく「娯楽」として捉えた点でしょう。知識がつながり、世界が解き明かされていく感覚に喜びを見出したのです。この「知的好奇心の爆発」こそが、受験のみならず起業家としての基盤を形作ったに違いありません。目標通り東京大学へ進学した彼は、在学中からスタートアップの世界に身を投じることになります。

大学1年生からは、今でいう「長期インターンシップ」を経験しました。これは学生が企業で実務を担い、就業体験を積む制度のことですが、当時はまだ一般的ではありませんでした。2003年、大学3年生で最初の会社を設立し、大好きなタイガース関連のビジネスを手掛けるなど、そのバイタリティは学生の枠を優に超えていました。

8年の苦節を経て上場へ。支えとなった「嘘をつかない」教え

2007年には現在のエボラブルアジアの前身となる「旅キャピタル」を共同創業しました。しかし、上場への道は険しく、実現までに8年という歳月を要しています。多くの起業家が挫折しかねない長い年月、吉村氏の心を支えたのは、母校の神父様から教わった「嘘をつかない、取り繕わない」というシンプルな倫理観でした。

苦境にあっても不正に手を染めず、誠実にビジネスと向き合う姿勢。これは現代の経営者にとって最も重要な資質と言えるでしょう。2016年にマザーズ上場、2017年には東証一部への指定替えを果たした背景には、テクニック以上に、中学・高校時代に育まれた揺るぎない人間性があったのだと感じずにはいられません。

第一志望の灘中学には不合格だったという過去も、吉村氏は隠さずに語ります。しかし、その挫折があったからこそ、大阪星光学院という「自分を見捨てない場所」に出会えた。人生の遠回りは、決して無駄ではないことを彼の歩みが証明しています。信じて見守ってくれる大人の存在が、どれほど一人の若者の可能性を広げるか、改めて考えさせられます。

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