2019年12月27日、私たちは時代の大きな節目に立ち会っています。平成が幕を閉じ、令和という新たな章が始まったこの1年は、埼玉県の政治と経済の地図を塗り替えるような激動の日々でした。16年という長きにわたり県政を牽引した上田清司氏の勇退は、県民に一つの時代の終わりを強く実感させたことでしょう。その後を継ぐリーダーを決める知事選は、まさに新時代の進むべき道を決める重要な選択の場となったのです。
12年に1度の「亥年」にあたった2019年は、大型選挙が立て続けに行われる「選挙イヤー」としても記憶に刻まれています。特に2019年8月25日に投開票された埼玉県知事選挙は、日本中の注目を集めました。自民・公明が推薦する青島健太氏と、上田路線の継承を掲げた大野元裕氏による激しいデッドヒートは、誰もが予想しなかった劇的な幕切れを迎えました。SNS上でも「埼玉の未来がどっちに転ぶか分からない」と、開票速報に釘付けになる声が溢れかえったのです。
当初は知名度で勝る青島氏が優勢との見方もありましたが、大野氏が都市部の無党派層から熱烈な支持を集めて逆転勝利を飾りました。この結果に対し、自民党県議からは「無党派層の動きを読み違えた」と嘆きの声が漏れるほど、県民の変革への意志は強固だったと言えます。ちなみに、前知事の上田氏は2019年10月27日の参院補選で見事に当選を果たし、再び国政の舞台へと返り咲いています。政治の表舞台から去るのではなく、場所を変えて埼玉のために尽力する姿は、支持者たちを大いに勇気づけました。
経済界のリーダー交代と「旧埼玉銀行」の復権
政治の世界だけでなく、埼玉の経済を支える屋台骨でも世代交代の波が押し寄せています。2019年6月には武蔵野銀行の加藤喜久雄氏が会長へと退き、長堀和正氏が新頭取に就任しました。金融業界では今、既存の仕組みをテクノロジーで革新する「フィンテック」への対応が急務となっています。15歳という大幅な若返りを果たした長堀新頭取には、デジタル化の波をいかに乗りこなし、千葉銀行との提携をどう深めていくかという、非常に難易度の高い舵取りが期待されています。
さらに興味深いのは、2019年を通じて県内の経済団体トップが次々と入れ替わったことです。5月の埼玉県経営者協会を皮切りに、11月には埼玉県商工会議所連合会の会長に埼玉りそな銀行の池田一義社長が就任しました。驚くべきことに、新たにトップに就いた3名はいずれも旧埼玉銀行の出身者です。かつて公的資金の注入を受けた歴史を持つグループが、2015年の完済を経て、再び名実ともに「埼玉の顔」として返り咲いたことは、地元企業にとっても一つの誇らしい物語ではないでしょうか。
自動車産業を襲う「CASE」の激流と世界再編
今、私たちの暮らしを支える自動車業界は、100年に1度と言われる大変革期を迎えています。その中心にあるのが「CASE」と呼ばれる潮流です。これは「Connected(接続)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(共有)」「Electric(電動化)」の頭文字を取った言葉で、従来の車づくりの概念を根本から覆すものです。この荒波は埼玉県内の優良企業たちを、かつてない規模の合流や買収へと突き動かしました。
2019年5月にはカルソニックカンセイが海外大手を買収し、10月には「マレリ」へと社名を変更しました。また、ホンダ系の部品メーカー3社が日立系と統合を決断し、12月18日にはいすゞ自動車がUDトラックスを買収すると発表するなど、もはや独立独歩で生き残るのが困難な時代に突入しています。専門家は、膨大な投資が必要な自動運転技術の開発には、世界規模での拠点再配置が必要だと指摘しています。統合による合理化は避けて通れませんが、現場で働く人々の雇用が守られるのか、私たちは厳しく注視し続ける必要があるでしょう。
私の意見としては、こうした再編は単なる「守り」ではなく、埼玉の技術力が世界標準へ駆け上がる「攻め」のチャンスだと捉えています。地域経済が冷え込む懸念もありますが、新しい知事のもとで、こうした企業再編をポジティブな雇用創出に繋げる政策を期待したいところです。変化を恐れず、むしろその渦中を楽しむ。2019年は、埼玉が真の「新しい時代」へと足を踏み出した、希望に満ちた1年だったと言えるはずです。
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