2019年はシェアオフィス大手の米ウィーカンパニーが上場延期に追い込まれるなど、評価額が10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」の失速が目立った激動の1年でした。資金調達の環境が厳しさを増すなか、アジア発の有力テック企業がどのように生き残りを図るのか世界が注目しています。なかでも、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから累計5億2000万ドルという巨額の出資を受ける香港の旅行予約サイト「クルック(Klook)」の動向から目が離せません。ネット上でも同社の利便性の高さに驚く声が続出しています。
SNSでは「現地で並ぶより圧倒的に安いしスマホ一つで完結するのが神」「行き先だけ決めて現地でツアーを選ぶ自由な旅に手放せない」といった好意的な口コミが溢れています。多くの従来型サイトがホテルや航空券の価格競争に終始するなか、同社は旅先でのアクティビティや現地ツアーの予約に特化することで独自の地位を築きました。若者層の旅のスタイルに変革をもたらしたクルックは、スタートアップへの逆風が強まる2020年の経営環境をもチャンスに変えようと、極めて前向きな姿勢を見せています。
AI分析の強化と世界展開で競合他社を突き放す反撃のシナリオ
共同創業者兼最高執行責任者の王志豪氏は、2020年に開催される東京五輪がアジアの旅行需要をさらに押し上げると確信しています。もちろん、米エアビーアンドビーなどの巨頭が類似のツアー予約事業に参入し、競争は激化の一途をたどるでしょう。しかし同社は、強みである技術陣の大幅な拡充によって明確な差別化を図る戦略です。ユーザーの閲覧履歴や購買行動を人工知能であるAIに学習させ、そのアルゴリズムによって最適な旅行プランを提案する仕組みをさらに進化させていく方針を掲げています。
王氏は「旅行はオケージョン(場面や状況)に基づく消費行動だ」と語ります。ロマンチックな新婚旅行や賑やかな家族旅行など、その時々の状況に合わせて最適な商品をスムーズに提示するため、シンガポールにデータ分析の専門チームを新設する計画です。さらに、現在29ある世界拠点のうち欧州の拠点を年内に倍増させ、日本人向けにはハワイやグアムの現地企業と提携して品揃えを強化します。利便性を極限まで高めるこのデジタル戦略こそ、競合を寄せ付けない最大の武器になるはずです。
編集部EYE:不確実な時代を生き抜く本質的な価値とこれからの展望
スタートアップのバブル崩壊が囁かれる今だからこそ、クルックの「消えることのない確実な旅行需要を捉える」という地に足の着いたビジネスモデルには強い説得力があります。単に流行りのテクノロジーを追うのではなく、消費者が現場で感じる不便さを解消することに投資を集中させている点が見事です。資金調達環境の悪化を跳ね返し、ソフトバンクの持つ強力なネットワークやAI技術を日本の市場開拓にどう活かしていくのか、同社の2020年の快進撃には編集部としても大いに期待しています。
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