液晶から5G・自動車の未来へ。日本電気硝子が挑む「再出発」の全貌

薄型パネル用ガラスの雄として知られる日本電気硝子が、今、大きな転換期を迎えています。2020年2月5日に発表された2019年12月期の連結決算において、同社は上場以来初となる最終赤字を記録しました。この厳しい結果の背景には、液晶関連事業の苦戦に加え、成長の柱と位置づけていたガラス繊維事業における買収の不発という大きな誤算があったのです。

かつて、約730億円という巨額を投じてまで獲得した欧米のガラス繊維事業でしたが、世界的な景気減速の影響を受け、自動車や風力発電機向けの需要が伸び悩みを見せました。その結果、約340億円もの特別損失を計上せざるを得ない事態となりました。経営陣も「技術導入の見通しが甘かった」と認める通り、過去の戦略が期待通りに実を結ばなかったことは、まさに痛恨の極みと言えるでしょう。

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液晶一本足打法からの脱却へ

テレビやスマートフォンに使われる液晶用ガラスは、同社の長年の強みであり、世界シェアの約2割を誇ります。しかし、市場全体の縮小や激しい価格競争は避けられず、もはやガラス一本足打法での成長には限界が見えています。業界内では、この構造からの脱却は正しい選択であると評価されていますが、市況の回復には長い時間が必要だという厳しい見方も根強くあります。

SNS上でも「老舗の決断には勇気がいる」「5Gへのシフトは必然」といった声が上がっており、多くの投資家や業界関係者が、同社の新しい挑戦を注視しています。私も、この果敢な舵取りは、企業の持続的な成長のためには避けて通れない、前向きな戦略であると強く感じます。過去の教訓を糧に、新たな価値をどう生み出すかが、今後の試金石となるはずです。

5G・CASEが描く新たな成長の軌跡

窮地に立たされた同社が活路を見出す先は、次世代通信規格「5G」や、自動車の新領域「CASE(ケース)」です。CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化の頭文字を取った言葉で、自動車産業が100年に一度の大変革期にあることを示しています。同社は、こうした成長分野で2020年中に前年比5割増となる約10製品もの新投入を計画しています。

特に注目すべきは、5G基地局向けの光通信用球状レンズです。5Gの電波は従来の通信より届く範囲が狭いため、多くの基地局が必要となります。そこで、基地局間を繋ぐ光通信の要として、同社の高性能なレンズが不可欠となるのです。また、赤外線カメラ用レンズにおいても、高価な材料を使わずに高い性能を誇るコスト競争力は、大きな武器となることでしょう。

磨き抜かれた「成膜技術」という強み

彼らの強みは、長年培ってきた「成膜技術」にあります。これはガラスの表面に極めて薄い膜を何層も重ね、光の透過率を自在にコントロールする技術です。素材開発から加工まで一貫して自社で手がける体制は、顧客の細かな要望やトラブルにも迅速に対応できる強みであり、他社にはない競合優位性です。

しかし、電子部品の世界は代替品の登場も早く、油断できない激戦区です。同社は2025年12月期までに、電子部品関連の売上高を2019年12月期比で5割増となる300億円へ引き上げる野心的な目標を掲げています。既存技術を深化させ、どれだけ付加価値の高い部品へと昇華させられるか。日本電気硝子の真価が問われる、まさに正念場といえます。

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