2020年02月10日、今年も日本の経済を占う重要なイベントである春季労使交渉が本格的に幕を開けました。かつて「春闘」と呼ばれたこの交渉は、労働組合と経営陣が給与や働く環境を話し合う60年以上の歴史を持つ枠組みです。しかし、2020年の交渉はいつもと様子が違います。ネット上でも「ついに一律一辺倒の時代が終わるのか」「頑張った人が報われる仕組みは大歓迎」といった声が上がり、これまでにない盛り上がりを見せているのです。
その中心にいるのが、業界の先導役である「パターンセッター」のトヨタ自動車です。トヨタの労働組合は今回、基本給を一斉に底上げするベースアップ、いわゆる「ベア」について、全員一律ではなく人事評価に応じて個々に差をつける新制度を提案しました。この決断は、年功序列を重視してきた日本の賃金体系を根底から揺るがす、歴史的なターニングポイントになる可能性を秘めています。
なぜ今、日本型雇用の見直しが必要なのか
背景にあるのは、世界規模で加速するデジタル化や国際競争の波です。経営側を代表する経団連も、終身雇用や年功序列といった従来の「日本型雇用」からの脱却を強く掲げています。先進国の中で日本の労働生産性の低さは突出しており、主要7カ国でも最下位という厳しい現実に直面しているからです。優秀な人材を引き止め、社員のやる気を引き出すためには、年齢ではなく「仕事の成果や職務」に応じて報酬を決める仕組みへの移行が急務なのでしょう。
一方で、日本経済の本格的な回復には、個人の消費を呼び起こすための継続的な給与引き上げが絶対に欠かせません。アベノミクス以降、日本の賃上げ率は2%台を維持してきましたが、2020年は米中貿易摩擦による業績悪化や、新型コロナウイルスの感染拡大という大逆風が吹いています。今回の交渉で「2%」の大台を守り抜けるかどうかが、景気の冷え込みを防ぐ防波堤になるでしょう。
私は、この成果主義へのシフトを単なるコスト削減の道具にしてはならないと考えます。企業は目先の数字に囚われず、不透明な時代を生き抜く「稼ぐ力」を育てるためにこそ、この改革を用いるべきです。評価の透明性を高め、会社が社員に何を期待しているかを明確に伝える。それこそが、働く人のモチベーションを高め、結果として持続可能な賃上げと企業の成長を両立させる唯一の道ではないでしょうか。
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