日本経済の停滞を意味する「日本病」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。2020年2月12日、日本経済研究センターにおいて、デジタル資本主義がもたらす世界と日本の未来をテーマにした熱いパネルディスカッションが開催されました。バブル崩壊以降、約30年ものあいだ経済の低迷が続く日本が、どのようにしてこの苦境を打破すべきかというマクロな視点から、非常に深い議論が交わされたのです。
このまま対策を講じなければ、日本の国内総生産(GDP)は今後40年でインドやドイツに追い抜かれ、世界第5位まで転落するという厳しい予測が共有されました。GDPとは国内で一定期間に生み出された付加価値の総額のことで、国の経済的な活力を示す重要な指標です。日本経済が縮小している主な原因として、ソフトウェアや知的財産、データといった「無形資産」への投資が質と量の両面で圧倒的に不足している点が挙げられました。
さらに、個人データを安全かつ効果的に活用するための制度設計が遅れていることも、共通の課題として浮き彫りになっています。SNS上でも「課題は分かっているのに社会が変わらないもどかしさを感じる」といった、危機感を共有する声が多く寄せられていました。日本の産業が生き残るためには、デジタル技術が創出する新たな価値観をどん欲に吸収し、異なる業種がこれまでの枠組みを超えて連携していくことが不可欠だと言えます。
そこで重要になるのが、市場のニーズと先端技術を巧みに結びつける「カタリスト(触媒)」と呼ばれる人材の存在です。化学反応を促進させる触媒のように、ビジネスにおいて異なる要素を融合させて変革を起こす人物を指します。企業内でイノベーションを創出するには、このカタリストの卵たちに資金や権限といったリソースを大胆に配分し、同時に国としても新事業に挑むテクノロジー企業を強力に後押しする政策が必要不可欠でしょう。
しかし、多くの有識者が課題を理解し、超高齢化社会が到来する前に対策を打つべきだと分かっていながら、実際の行動に移せていないのが日本の現状です。まるで病名と処方箋が判明しているのに、誰も薬を飲もうとしない状況こそが日本病の本質であると私は考えます。危機感を持つだけで動かない組織の姿勢には、私自身も強い危機感を抱かざるを得ません。言葉だけでなく、今すぐ実践へと踏み出す覚悟が求められているのです。
最先端を走る中国の教育体系と実践力に学ぶべきこと
日本が停滞を続ける一方で、隣国の中国は圧倒的なスピードで実践を積み重ねています。科学技術振興機構の業務で北京を訪れた際、現地の最先端を行く国家重点大学である北京郵電大学の学部長から、驚くべきカリキュラムの全貌を伺いました。その教育方針には、学生の革新精神と実践能力を育むために、理論と実践を融合させた「教養・専門・革新創業教育」という三位一体のシステムを構築することが明確に掲げられていたのです。
この中で特に注目すべき「革新創業教育」とは、単に技術を教えるだけでなく、実際の起業を見据えてマーケティングや会計、プロジェクトマネジメントを体系的に学ぶ科目のことです。中国では、ビジネスの現場とテクノロジーの最前線を同時に理解する、次世代のカタリストの育成が大学レベルで急速に進んでいます。このスピード感あふれる人材育成の仕組みには、SNSでも「日本の大学教育も見習うべきだ」と大きな反響がありました。
事業と技術の双方に精通したカタリストが次々と誕生する中国の勢いを目の当たりにし、日本も一刻も早く教育や組織のあり方を改革すべきだと痛感させられます。私たち大人がすべきことは、若者がカタリストとして縦横無尽に活躍できる環境を整えることです。未来への処方箋が出されている今、私たちは躊躇している時間を終わりにし、その薬をいち早く服用して次なる一歩を踏み出すべきではないでしょうか。
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