2019年、アメリカの小売業界ではかつてないほどの熱を帯びた「配送スピード競争」が繰り広げられています。その中心にいるのは、ネット通販の王者アマゾンと、世界最大の小売店であるウォルマートです。両者の戦いは、もはや単なるサービス合戦の域を超え、企業の威信をかけた真剣勝負へと発展しているようです。
アマゾンは2019年4月末、プライム会員向けに提供していた「2日以内」の無料配送を、さらに短縮して「翌日」に届ける計画を電撃発表しました。すでに一部商品では実施されていましたが、対象を1億点以上にまで拡大するため、2020年までに約8億ドル(約860億円)という巨額の投資を行うというから驚きですね。
この動きを黙って見ていなかったのが、リアル店舗の王者ウォルマートです。彼らはアマゾンの発表直後に「新しい配送プログラムを近日公開する」とSNSで予告し、2019年5月中旬には35ドル以上の買い物で「翌日無料配送」を実現するプランを打ち出しました。アマゾンと違い、年会費が不要という点が最大の武器でしょう。
物流の「裏側」で起きている、真の技術力争い
SNS上では「ウォルマートが本気を出した!」「アマゾン危うし」といった投稿が相次ぎ、消費者の期待は最高潮に達しています。しかし、ここで注目すべきは、物流には大きく分けて2つのフェーズがあるという点です。それは、商品を店舗まで運ぶ「川上」の物流と、お客様の自宅へ届ける「川下」の物流の違いです。
「サプライチェーン・マネジメント(SCM)」と呼ばれる、原材料の調達から店舗に並ぶまでの全体管理においては、今なおウォルマートが全米トップに君臨しています。一方で、注文を受けてから梱包し、発送するまでの一連の流れである「フルフィルメント」や、お客様の玄関先まで届ける「ラストワンマイル」では、アマゾンが圧倒的な技術を誇ります。
「ラストワンマイル」とは、配送拠点から最終的なお届け先までの最後の区間を指す専門用語です。ここをどう制するかが勝敗を分けるため、ウォルマートはこの分野でアマゾンを猛追しています。これまで圧倒的だと思われていたアマゾンの牙城が、リアル店舗を持つ企業の底力によって揺さぶられている様子は、まさに歴史的な転換点と言えるでしょう。
百貨店からスーパーまで!全米を覆う「即日配送」の波
この配送スピード競争は、二大巨頭以外にも波及しています。ホームデポは2019年の第2四半期内に、午後2時までの注文なら当日中に届けるサービスを、全米人口の半分をカバーする地域で展開すると発表しました。お届けまでの時間を1分でも短くすることで、顧客が実際に購入に至る「コンバージョンレート(成約率)」を高める狙いです。
また、2017年に配送代行のシップトを買収したターゲットは、2019年1月から6万5千点以上の商品を当日配送可能にしました。さらに2019年6月には、自社のウェブサイトに配送機能を完全に統合しています。これにより、ユーザーはよりシームレスに買い物を楽しめるようになり、利便性が飛躍的に向上したことは間違いありません。
さらに驚くべきはスーパー大手のクローガーです。彼らは現在、なんと「30分以内」に届ける超短時間配送を2店舗でテストしています。これは狭い商圏をターゲットにした店舗形態でなければ不可能な挑戦であり、アマゾンのような広域配送モデルとは異なる、リアル店舗の強みを最大限に活かした戦略だと言えますね。
編集者からの一言:競争が生む「消費者の黄金時代」
かつて「アマゾンがあらゆる実店舗を破壊する」と言われてきましたが、2019年現在の状況を見る限り、優秀なリアル小売業は決して屈していません。むしろ、アマゾンの挑戦をバネにして、自らの物流網をさらに進化させています。企業が切磋琢磨することで、私たち消費者がより便利で豊かな生活を享受できるのは、実に喜ばしいことではないでしょうか。
アマゾンが業界を「破壊」するのではなく、既存の企業の目を覚まさせ、サービス水準を底上げしたという側面は否定できません。物流戦争はこれからも激しさを増すでしょうが、その恩恵を最も受けるのは私たち消費者です。この先、どのような驚きのサービスが飛び出すのか、2019年下半期の動きからも目が離せませんね。
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