古代日本のミステリーが、最先端の科学によって解き明かされようとしています。日本の豊かな自然と共に約1万5千年もの長きにわたり続いた縄文時代。その終盤に、かつてない規模の人口激減が発生していたという、衝撃的な研究結果が発表されました。東京大学の大橋順准教授(集団ゲノム学)らの研究チームが、現代の日本人男性のDNAを解析し、2019年6月18日までに英科学誌でこの事実を公表したのです。
研究チームは、父系で遺伝するY染色体という、男性だけが持つ染色体を分析しました。これは、現代の韓国人や中国人の集団には見られない、縄文人特有と考えられる遺伝子の型を持つ日本人男性122人を特定し、遺伝子の変異が起こる速度を基に、過去へ遡って人口の変動を推定する、という非常に緻密な手法です。この解析から、彼らの祖先が縄文時代の終わり頃に、急速に数を減らしたことが明確に示されました。具体的には、縄文時代から弥生時代へと移り変わる紀元前1200年頃から紀元後200年頃にあたる約3200年前から2000年前の間に、一時は26万人に達していたと推測される人口が、なんと3分の1にまで減少したという計算になります。
この人口激減の最大の要因として、研究チームは寒冷化を挙げています。縄文時代の人々は、狩猟や採集、漁労といった自然の恵みに頼る狩猟採集生活を営んでいました。気候が寒冷化することで、彼らの重要な食料源であった動物や植物の数が減少し、安定した食料供給が困難になったことが、大規模な飢餓や生活基盤の崩壊に繋がり、人口が急減したと推測されているのです。これは、これまで遺跡の規模や数の縮小から指摘されていた**「縄文晩期に人口が減少したのではないか」という仮説を、科学的なDNA解析によって力強く裏付けるものでしょう。
この発表はSNSでも大きな反響を呼んでいます。「縄文人の生活は豊かだと思っていたのに、そんな大変な時代があったのか」「DNA解析で古代の人口変動が分かるなんてすごい」「やっぱり気候変動は歴史を変えるんだ」といった驚きや関心の声が多く見受けられました。この事実から見えてくるのは、たとえ豊かな文化を築いたとしても、人類は常に環境の変化という大きな壁に直面してきたということです。自然と密接に関わり生きていた縄文の人々にとって、寒冷化はまさに生存を脅かす危機**だったに違いありません。
縄文から弥生へ:食料安定化と人口の急回復
しかし、人口激減の時代は長くは続きませんでした。その後の弥生時代に、朝鮮半島を経由して日本へ稲作が伝わります。稲作、つまり農耕の開始は、人類史における食料生産の安定化をもたらす革命的な出来事です。これまで自然の気まぐれに左右されていた食料供給が、人間の手によって計画的かつ大量に行えるようになったことで、生活基盤は劇的に安定し、それに伴い人口は急回復したと見られています。これは、食料の獲得方法の変化が、いかに社会や人口の規模に影響を与えるかを示す好例ではないでしょうか。
大橋准教授は、今回用いたDNA解析の手法について、「この技術は、縄文人と弥生人が混血して形成された私たち日本人のような集団だけでなく、異種族の混血によって生まれた他の集団の歴史的な人口変動を類推する際にも非常に有効である」と述べています。集団ゲノム学という学問分野は、このように現代人のDNAの中に刻まれた情報から、遠い祖先の苦難と繁栄の物語を鮮やかに読み解くカギを与えてくれるでしょう。私たちのルーツを知る上で、この研究成果は非常に重要な一歩を踏み出したと言えるでしょう。
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