大手電機メーカー、三菱電機のグループ企業において、あまりにも痛ましい事件が明るみに出ました。子会社であるメルコセミコンダクタエンジニアリングに所属していた40代の技術職男性が、長時間の過重労働によって精神障害を患い、自ら命を絶っていたことが2019年11月22日、同社への取材で判明したのです。男性は別の子会社への出向中に過酷な勤務を強いられており、その労働環境の過酷さが改めて浮き彫りとなっています。
亡くなった男性は、兵庫県豊岡市にあるメルコパワーデバイスの豊岡工場で勤務していた際、管理職一歩手前の「副課長」という責任ある立場にありました。しかし、その実態は月100時間を超える時間外労働が常態化するという、極めて深刻なものだったようです。ここで言う「時間外労働」とは、いわゆる残業のことですが、月100時間は厚生労働省が定める「過労死ライン」を大きく上回る数字であり、心身に致命的な影響を及ぼす危険な水域に達していました。
男性はその後、福岡市内の事業所へ異動となりましたが、一度蝕まれた精神状態が回復することはなく、2017年12月に帰らぬ人となりました。残されたご遺族は、愛する家族を奪った原因が業務にあるとして、但馬労働基準監督署へ労災(労働災害)の申請を行いました。慎重な調査が進められた結果、2019年10月、同労基署は男性の死を業務に起因するものと認め、正式に労災認定を下したのです。
SNS上ではこの報を受け、「また三菱電機グループか」「対策をしていたはずなのに何も変わっていない」といった厳しい批判の声が相次いでいます。特に、責任ある立場に追い込みながら過重な負担を強いる企業の体質に対して、憤りを感じるユーザーが多いようです。働き方改革が叫ばれる現代において、こうした悲劇が繰り返されることへの絶望感や、若手・中堅社員が直面する労働環境の過酷さを懸念する意見がタイムラインを埋め尽くしています。
繰り返される悲劇と問われる企業の安全配慮義務
三菱電機本体では、2014年から2017年にかけて、すでに5人の社員が長時間労働による精神障害や自殺で労災認定を受けています。同社はこれを受け、2016年度から抜本的な働き方改革に着手していました。2018年3月には、実際の労働時間に関わらず一定時間を働いたとみなす「裁量労働制」を廃止するなど、制度の見直しを進めていた最中でした。しかし、その網の目から漏れるように、関連会社で再び尊い命が失われてしまったのです。
今回の件について同社広報部は、「関係会社の社員が亡くなった事実を非常に重く受け止めている」とし、今後もグループ全体で適切な労務管理に徹底して取り組む姿勢を見せています。しかし、制度を整えるだけでは現場の疲弊を防げないということが、今回の事案で証明されたと言えるでしょう。形だけの改革ではなく、社員一人ひとりの命を守るための実効性のあるマネジメントが、今まさに問われているのではないでしょうか。
私自身の意見としては、管理職に近い立場であるがゆえに「限界」を口にできなかった男性の苦しみを思うと、胸が締め付けられる思いです。企業は利益を追求する組織ですが、それは従業員の健康と命の犠牲の上に成り立つものであってはなりません。「副課長」という肩書きが、結果として過剰な責任を背負わせる足枷になっていた可能性も否定できず、組織全体の意識改革が急務であると感じます。二度とこのような悲しみを生んではいけません。
コメント