2015年のクリスマスの夜、一人の尊い命が失われました。広告代理店最大手の電通に勤務していた新入社員、高橋まつりさんが過酷な長時間労働とパワーハラスメントの末に自ら命を絶ってから、2019年12月25日でちょうど4年が経過します。この悲劇をきっかけに社会全体で働き方への関心が高まりましたが、今なお現場では深刻な状況が続いているようです。
母である幸美さんは、この節目に合わせて切実な思いを込めた手記を公表されました。手記の中で彼女は、若者が労働によって命を落とす現状に対し、日本政府はもっと強い危機感を持って対策を講じるべきだと訴えています。SNS上でもこの発信に対し、「4年経っても何も変わっていないのではないか」「命より大事な仕事なんてない」といった、悲痛な共感の声が次々と上がっています。
繰り返される過ちと電通への厳しい視線
電通は過去に法人として罰金刑を受け、再発防止を誓ったはずでした。しかし2019年9月には、三田労働基準監督署から再び是正勧告を受けていたことが判明しています。是正勧告とは、労働基準法などの違反が認められた際に、行政機関が企業へ改善を命じる行政指導のことです。幸美さんは、娘の命と尊厳が再び踏みにじられた思いであり、社風は容易には変わらないと厳しい言葉を投げかけています。
労働環境の問題は、決して一社に限った話ではありません。2019年8月には三菱電機でも新入社員が過労自殺に追い込まれ、教育主任が自殺教唆の疑いで書類送検されるという衝撃的な事件が発生しました。自殺教唆(じさつきょうさ)とは、相手に自殺を決意させるよう働きかける行為を指す重い言葉です。このように、ハラスメントを巡る労災認定は現在も後を絶たないのが実情といえるでしょう。
私個人としても、企業の利益や効率が個人の生存権を上回るような社会構造には、強い憤りを感じざるを得ません。どんなに華やかなキャリアや実績があったとしても、本人が心身ともに健康でなければ、その仕事に一体どのような価値があるのでしょうか。企業側は「使い捨て」の精神を捨て、一人の人間としての尊厳を最優先に守る義務があるはずです。
未来を奪われた若者たちのために私たちができること
もし、まつりさんが存命であれば、2019年現在は28歳という輝かしい年齢を迎えていたはずです。友人たちの結婚や出産の知らせを聞くたびに、幸美さんは娘がもうこの世にいないという現実を突きつけられるといいます。そんな深い悲しみを抱えながらも、彼女は過労死等防止対策推進協議会の委員として、現在も全国各地で労働環境の改善を訴え続けています。
「若者が生き生きと働き、幸せな人生を歩める国になってほしい」という幸美さんの願いは、私たち一人ひとりに突きつけられた課題でもあります。命が軽んじられる風潮に対して、私たちは決して無関心でいてはいけません。誰かの犠牲の上に成り立つ便利さやサービスを享受している可能性を自覚し、社会全体で「NO」と声を上げ続ける勇気が、今こそ求められているのではないでしょうか。
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