石川県を拠点に世界へ高品質な電源装置を送り出しているコーセル株式会社が、2019年12月18日に発表した2019年5月から11月期の連結決算は、業界全体に戦慄が走る内容となりました。同期の純利益は、前年の同じ時期と比べて実に90%も減少した1億円という結果です。売上高も21%減の117億円と、厳しい冬の到来を象徴するような大幅な落ち込みを見せています。
今回の苦境の背景にあるのは、世界経済を揺るがしている「米中貿易摩擦」という巨大な影に他なりません。この国家間の対立により、国内外の企業が新しい機械を導入する「設備投資」を先送りする動きが加速しました。その結果、工場の自動化を担うFA(ファクトリーオートメーション)機器や、IT社会の心臓部を作る半導体製造装置に欠かせない、同社の電源装置の販売が激しく停滞してしまったのです。
ネット上では、この劇的な減益に対して「製造業の冷え込みが予想以上に深刻だ」という驚きの声や、「電源は産業のバロメーターだから、この数字は日本経済全体への警鐘ではないか」といった懸念が広がっています。特に、中国市場に依存していた多くの製造業が、一様にブレーキを踏まざるを得ない状況に陥っていることが、SNSでの議論を加速させているようです。
世界に広がる冷え込みと、復活をかける「5G」の可能性
会見の席で、コーセルの谷川正人社長は厳しい表情を崩しませんでした。中国経済の停滞はアジア圏に留まらず、欧州を牽引するドイツにまで飛び火し、需要の減退を招いています。米国においても、かつてのような勢いのある需要回復は未だ霧の中で、出口の見えない状況が続いています。世界中の工場が、次の一手を打てずに足踏みを続けている現状が浮き彫りになりました。
ここで専門用語を整理すると、FA機器とは「工場での生産工程を自動化するための装置」を指します。いわば工場の労働力を機械に置き換えるものですが、景気が不透明になると企業はまずこの高額な投資を控えます。電源はそれら全ての装置にエネルギーを供給する「血液」のような存在であるため、装置の売れ行き不振がコーセルの業績にダイレクトに跳ね返ってしまったと言えるでしょう。
私個人の見解としては、今回の数字はショッキングですが、決して悲観的な材料ばかりではないと考えます。同社は2020年5月期の業績予想を、2019年9月に下方修正した数値から据え置きました。その根拠となっているのが、日本国内で急速に高まっている「5G(第5世代移動通信システム)」関連の設備への引き合いです。次世代通信のインフラ整備は、停滞する製造業にとって唯一の「光」となるはずです。
今は耐え忍ぶ時期かもしれませんが、5Gの普及は確実に社会の構造を変え、新たな産業機器の需要を掘り起こすでしょう。2019年12月19日現在の厳しい経営環境をどう乗り越え、最先端技術の波に乗って再び高みを目指すのか。コーセルが持つ高い技術力が、再び世界中のスマート工場で輝きを取り戻す日を、投資家も市場も固唾を飲んで見守っています。
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