【神戸製鋼】不正データ改ざんから2年…100億円超を投じた「風化との闘い」と赤字転落の苦悩に迫る!ものづくり再生への不退転の決意とは

日本の製造業における信頼を大きく揺るがした、株式会社神戸製鋼所の品質データ改ざん問題。2017年10月に発覚したこの大規模な不祥事から2年あまりが経過しました。現在、同社は組織改革を推し進めているものの、事件の記憶を社内でどう維持し、再発を防ぐかという「風化」の難題に直面しています。

SNS上では「不正を完全に無くすのは本当に難しい」「仕組みを変えても人の意識を変えるには時間がかかる」といった、改革の厳しさに対するリアルな声が数多く寄せられています。100億円を超える巨額の対策費を投じながらも、模索を続ける現場の最前線をレポートします。

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過去の不祥事を乗り越える!ソフト面における意識改革の試行錯誤

2019年10月下旬、東京本社において一風変わった発表会が開催されました。社員が自発的に行う地域貢献や風土改革を表彰する「KOBELCOの約束賞」という、同社で初めての試みです。ボランティア活動やスローガン入りカレンダーの制作など、一見すると地道な内容が並びます。

2018年4月に非主力部門からトップに就任した山口貢社長は、表彰式後に「違和感を抱きつつも、大きな気づきがあった」と本音を漏らしました。数値目標のように結果が見えやすいハード面の改革とは異なり、社員の意識を変えるソフト面の改革は効果の測定が簡単ではありません。

それでも神鋼がこの取り組みを行う背景には、過去の苦い教訓があります。同社は1990年代に総会屋への利益供与、2000年代には工場のばい煙データ改ざんなど、過去にも多くの不祥事を繰り返してきました。そのたびに再発防止策を講じたものの、結果として機能しなかったのです。

不祥事が連鎖した要因は、納期を最優先する風土や、組織の「たこつぼ化」にありました。たこつぼ化とは、組織の各部門が互いに孤立し、内部の様子が外から見えなくなる閉鎖的な状態を指す専門用語です。神鋼は多角的な事業展開が強みである反面、管理が現場任せになっていました。

筆者は、不祥事の再発を防ぐためには、こうした閉鎖的な組織風土を根本から解体することが不可欠であると考えます。現場に過度なプレッシャーを与える構造そのものを見直さない限り、どれほど立派なスローガンを掲げても、再び同じ過ちを繰り返すリスクは排除できないでしょう。

徹底的な現場の自動化と、社長自ら100回を超える対話への挑戦

現在、見える部分の改革は着実に進展しています。ガバナンス(企業統治)の強化として取締役会議長に社外取締役を据え、外部の監視の目を厳しくしました。さらに縦割り組織を打破するため、鉄鋼とアルミといった異なる部門を統合し、人事交流や横断的な相談組織も結成しています。

不正の舞台となった栃木県の真岡製造所でも、劇的な変化が起きています。かつては作業員が手作業で検査データを入力しており、誰でも数値を書き換えられる状態でした。しかし現在は、サンプルにQRコードを印字して読み込むことで、データの改ざんが不可能な自動化システムを導入しています。

こうしたデータ自動化の対応は、2020年度末までにすべての工場で完了する計画です。これに加えて2019年6月には、神戸市内の研修センターに不正の歴史を記録した展示室を開設しました。社員や幹部が定期的に訪れ、世間の信頼を失った原点を見つめ直すための拠点としています。

さらに山口社長はみずから工場へ足を運び、現場の係長クラスの社員と100回以上の対話を重ねています。以前は社長が訪れる機会など3年に1回程度であった現場に対して、トップが直接メッセージを伝え続ける姿勢は、風化を食い止めるための強い決意の表れといえます。

迫られる選択と集中!100億円超の投資に伴う赤字転落の試練

しかし、こうした改革は順風満帆とはいきません。品質重視に舵を切ったことで検査が厳密になり、製品の製造工程における「歩留まり」が低下しました。歩留まりとは、投入した原料からどれだけの良品が作れたかを示す割合のことで、これが下がると収益に悪影響を及ぼします。

再発防止への投資額は100億円を超え、外部環境の悪化も重なった結果、2020年3月期の最終損益は連結で50億円の赤字を見込む事態となっています。中核であるアルミ・銅事業の再建も遅れており、利益を生み出して株主や社員へ還元するという好循環にはまだ遠い状況です。

神鋼は収益を安定させるため、好調な電力事業への「選択と集中」を進めており、2019年11月には黒字だった鋼管事業の売却を決めました。建設中の新たな発電所が20前半にすべて稼働すれば、21年3月期以降は電力事業が大きな稼ぎ頭として収益を支える見通しとなっています。

不正によって失われた企業の体力を回復させる道のりは、想像以上に険しいものです。収益の悪化を覚悟のうえで、100億円超を投じて品質至上主義を貫き通せるかどうかが、これからの神戸製鋼所の未来、そして日本の「ものづくり」の信頼回復の成否を握っているに違いありません。

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