働きやすさを追求する企業の姿勢が、今まさに注目を集めています。中堅化学メーカーのKHネオケムは、工場の若手社員が安心して長く働ける環境づくりへ本格的に乗り出しました。特に注目したいのは、2020年春に千葉県市原市の千葉工場近くに誕生する、至れり尽くせりの新しい独身寮です。SNSでも「家賃1万円で食事付きは羨ましすぎる」「こんな会社で働きたい」といった羨望の声が数多く上がっており、若者の心をしっかりと掴んでいる様子が窺えます。
この新しい寮は千葉工場から約3キロメートルの場所に位置しており、自転車なら十数分で快適に通勤できる絶好のロケーションに建設されています。全27部屋が用意され、2020年4月に入社する新人のうち数人が最初に入居する予定です。特筆すべきは、朝夕2回の食事が提供される点でしょう。さらに洗濯機や大型テレビ、冷蔵庫などの家電製品や通信機器があらかじめ完備されているため、新生活をスムーズに始められます。
これほど充実した設備でありながら、月々の家賃は1万円程度に抑えられる見込みです。こうした手厚いサポートの背景には、近年の産業界全体を襲う深刻な人手不足が関係しています。これまでは地元の工業高校から採用を行ってきましたが、大手企業との競争激化や少子化により、2015年頃から新入社員の確保が難しくなっていました。そこで同社は、採用のターゲットを全国の工業高校へと広げる決断を下したのです。
遠方から我が子を送り出す保護者にとって、見知らぬ土地での一人暮らしは心配が尽きないものですが、防犯面や生活環境が整った寮があれば安心して就職を後押しできるでしょう。しかもこの独身寮には、最長で35歳まで入居し続けることが可能です。私はこの施策について、単なる福利厚生の枠を超えた、企業の未来を担う人材への素晴らしい投資であると感じています。地方の優秀な原石を発掘するための非常に有効な戦略です。
さらに同社は、入社後の定着率を向上させるための社内改革にも着手しました。実はここ数年、千葉工場では離職率が上昇傾向にあり、三重県にある四日市工場と比較しても課題となっていました。仕事のミスマッチや初期のつまずきを防ぐため、プラントの運営方法を記した作業手順書をこのほど大幅に刷新しています。以前の手順書は専門用語や社内特有の表現が多く、初心者にはハードルの高い内容でした。
コンビナートとは、原材料やエネルギーを効率的に融通し合うために、複数の化学工場が集まった生産地帯を指します。以前は同じ高校の先輩後輩という濃い繋がりの中で、現場のノウハウが自然と継承されていました。しかし近年は県外出身者や、化学を専門的に学んでいない普通科卒業の社員も増えています。言葉だけでは伝わりにくい業務を、写真や図解を豊富に盛り込んでひと目で理解できるようにした試みは、時代に即した賢明な判断と言えます。
将来的には、この寮に自治会を組織して運営を若手社員に委ねる方針も掲げられています。これにより社員同士の横のつながりが深まるだけでなく、自主性や自律性も育まれていくに違いありません。また、現場での管理手法そのものにもメスを入れています。すでに2018年から管理職を対象とした研修を実施し、部下との信頼関係構築を最優先事項として指導してきました。
これまでの工場における指導は、できていない欠点を厳しく指摘するスタイルが主流でした。ささいなミスが重大な事故に直結する現場ゆえに、厳しい叱責が半ば慣習化していたのです。しかし現在は、部下を積極的に「褒める」マネジメントへの転換を図っています。優秀な社員を部門内で表彰する制度も取り入れ、自発的に考えて行動する風土が生まれつつあります。
ミスを責めるよりも良い部分を認め、褒めて伸ばすアプローチは、現代の若者気質にも合致しています。厳しさの中に信頼を置くこの改革は、結果として生産性を高め、企業の持続的な成長を支える基盤となるはずです。伝統的な職人気質からの脱却を恐れないKHネオケムの挑戦は、定着率向上に悩む多くの日本企業にとって、進むべき未来の道標となるのではないでしょうか。
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