ベトナムの経済シーンを牽引する巨大複合企業「ビングループ」が、同社としては初となるタイバーツ建ての社債を発行する計画を進めています。社債とは、企業が一般の投資家からお金を借りるために発行する一種の「借用証書」のようなものです。
このニュースに対し、SNS上では「あのビングループでも国内の資金集めに苦労するのか」「自動車事業への巨額投資が重荷になっているのでは」といった、驚きや今後の動向を注視する声が数多く上がっています。
不動産を筆頭に、ホテルや病院、教育など多角的なビジネスを展開してきた同社ですが、現在は大きな転換期を迎えています。2018年12月にスマートフォン製造へ参入し、さらに2019年6月には約4000億円を投じて自動車工場を開設しました。
しかし、この製造業への大胆なシフトが、思わぬ試練を招いているようです。工場は年間25万台の生産能力を誇るものの、2019年の自動車販売台数は1万5300台にとどまり、国内シェアは3%強と厳しいスタートになりました。
直近の2019年7月から9月期の連結決算に目を向けると、売上高は前年同期比で35%増の31兆ドン(約1500億円)と好調に見えます。その一方で、純利益は53%減の7000億ドンへと大きく落ち込んでしまいました。
この利益圧迫の主因こそが、思うように伸び悩む自動車事業の初期投資や運営コストであることは間違いありません。同社は2019年末以降、肥大化した非中核事業を整理するため、矢継ぎ早にリストラ策を打ち出しています。
さらに追い打ちをかけるのが、本国ベトナムにおける規制の強化です。ベトナム政府が不動産分野への融資や資金引き締めを厳格化したため、国内での資金調達環境は急速に悪化してしまいました。
こうした背景から、ビングループは近隣国であるタイでの起債、つまり社債の発行による資金集めに活路を見出した格好です。タイ財務省は、同社が2020年9月末までにバーツ建て社債を発行することを既に承認しています。
ただ、この戦略には特有のリスクも潜んでいます。現在のタイは輸出や観光が非常に堅調であり、国全体の稼ぎを示す「経常収支」の黒字基調が続いているため、通貨バーツの価値が非常に高くなっているのです。
実際に2019年のバーツは、米ドルに対して8%も上昇しました。タイの中央銀行が通貨高を抑える対策を講じているものの、目立った効果は現れておらず、今後もバーツ高が続けばビングループの返済負担は増すでしょう。
筆者の視点として、今回の決断はリスクを伴うものの、製造業への脱皮を図る上で避けて通れない「生みの苦しみ」だと捉えています。今後は数カ月以内に、他の外貨建て債券を周辺国で発行する動きも見られそうです。
世界展開を視野に入れるビングループにとって、この厳しい局面をどう乗り越えるかが、真のグローバル企業になれるかどうかの試金石となります。異国での資金調達という果敢な挑戦の成否に、世界中が注目しています。
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