車を運転するみなさんにとって、毎年の維持費に関わる保険料の動きはとても気になる話題ではないでしょうか。2020年1月22日、金融庁の審議会は自動車損害賠償責任保険、いわゆる「自賠責保険」の保険料を、同年4月から大幅に引き下げる方針を決定しました。強制加入であるこの保険が安くなるのは嬉しいニュースですが、実は手放しでは喜べない状況となっています。大手の損害保険会社が任意保険の料金を相次いで値上げしたため、私たちの実質的な負担感はほぼ変わらない見通しだからです。
SNS上でもこのニュースは大きな注目を集めており、「交通事故が減っているのになぜ保険料が上がるのか」といった疑問の声や、「実質的なプラマイゼロでがっかりした」という落胆のつぶやきが目立っています。せっかく義務付けられている保険が安くなっても、万が一に備えて加入する上乗せの保険が高くなってしまっては、家計への恩恵を感じにくいのも無理はありません。なぜこのような相反する改定が同時に起きてしまったのか、その背景にある自動車業界の最新事情を詳しく紐解いていきましょう。
安全装置のジレンマ!事故が減っても修理費が高騰する背景
警察庁が発表した2019年の交通事故死者数は3215人と、戦後最少を更新し続けています。人の命を救う技術の進歩は素晴らしいことですが、ここに保険料が下がらないカラクリが隠されています。現在の自動車には、自動ブレーキをはじめとする先進運転支援システム(ADAS)と呼ばれる高度な安全装備が次々と搭載されるようになりました。カメラやレーダーといった精密機械がバンパーやフロントガラスに埋め込まれているため、一度事故を起こすと部品代や調整にかかる修理費用が跳ね上がってしまうのです。
対人賠償をメインとする自賠責保険は、死亡事故の減少によって支払う保険金が減ったため、2020年4月から約16.4%もの引き下げが実現します。一方で、相手の車や自分の車を直すための「任意保険」では、1件あたりの修理費用が大幅に増加してしまいました。さらに、2019年10月の消費税増税や、2020年4月に控える民法改正による賠償額の影響も重なり、損害保険各社は1月から任意保険料を約3%値上げせざるを得ない状況に追い込まれたというわけです。
年齢層で異なる明暗と自動運転がもたらす未来の可能性
今回の保険料改定は、すべてのドライバーに一律で影響するわけではありません。損害保険各社は事故のリスクに応じて細かく料金を設定しているため、年齢層によって負担額にバラつきが出ます。悲しいことに、事故リスクが比較的高いとされる若年層や高齢者ドライバーは任意保険の値上げ幅が大きくなり、実質的な負担増となるケースが多いでしょう。その一方で、事故率が低い35歳以上の中年層であれば、値上げが抑えられたり、場合によっては全体で引き下げになったりする恩恵を受けられそうです。
編集部としては、この「安全装置による修理費高騰」は、技術の過渡期における一時的な試練であると考えています。2020年中には条件付きでシステムが運転を操作する自動運転車が実用化される予定であり、今後は車そのものがぶつからない社会へと本格的にシフトしていくはずです。物損事故そのものが劇的に減れば、いずれ任意保険の支払いも減り、私たちの負担が本格的に軽くなる日がやってきます。それまでは、安全運転を徹底して自身のゴールド免許や割引等級を維持することが、最大の節約術になるでしょう。
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