日本の半導体産業を牽引する大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)において、大きなトップ交代劇がありました。2020年1月29日、同社は副社長を務めていた早坂伸夫氏が新たに社長へ昇格する人事を発表したのです。これまで約10年間にわたり経営の舵取りを担ってきた成毛康雄氏は、病気療養のために退任を申し出ました。突然のニュースに驚きが広がっていますが、同期入社で技術畑を歩んできた早坂氏へのバトンタッチは、技術の継続性という観点から非常に前向きな選択だと私は確信しています。
この電撃的な新体制発表を受け、SNS上では「新社長のもとで日本発の半導体技術がどこまで世界に通用するか楽しみだ」といった期待の声が寄せられています。その一方で「早く体調を崩された成毛前社長の回復を祈りたい」と、前社長を労う温かいコメントも数多く見られました。同社は2018年6月に東芝から独立し、現在は米ベインキャピタルが主導する日米韓連合の傘下で再出発を切っています。今回のトップ交代は、まさに次の成長フェーズへ向かうための重要な転換点になるのではないでしょうか。
同日に開催された記者会見の席で、早坂新社長は「メモリーは最先端のデジタル社会を実現するために欠かせない基幹部品である」と力強く語りました。さらに、技術開発の手を決して止めることなく、さらなる飛躍を目指すという熱い抱負を述べています。今回の社長交代に伴い、今後の経営方針がどうなるのか注目が集まりましたが、早坂氏は退任する成毛氏の戦略やビジョンを完全に共有していると説明しました。これまでの路線をしっかりと引き継ぎつつ、強みである技術力に磨きをかける構えです。
上場延期とデータ保存を支えるNAND型フラッシュメモリーの市場価値
一方で、大きな関心を集めているのが株式上場のスケジュール変更です。従来は2019年度内の新規上場を目指していましたが、世界的な市況悪化の影響を受け、上場時期は2020年10月以降に連れ込む見通しとなりました。今後は上場の手続きを取り仕切る主幹事の証券会社を選び直すなど、戦略の再構築を進める模様です。会見に同席したステイシー・スミス会長は、独立から3年以内という大枠の方針を維持しつつも、必要な設備投資に関しては上場の時期に左右されず適切に実施していく姿勢を強調しました。
ここで同社が強みを持つ「NAND(ナンド)型フラッシュメモリー」について簡単に解説しましょう。これはスマートフォンの写真保存やパソコンのデータ記憶などに使われる、電源を切っても記録が消えない非常に便利な半導体メモリのことです。キオクシアは2018年のデータにおいて、この分野で世界シェア2位の17.6%を誇る巨大企業です。アメリカのウエスタンデジタル社と共同運営している三重県の四日市工場は、なんと世界で使われるこのメモリーの約3割を生産する世界屈指の拠点を担っています。
現在のキオクシアの業績を見ると、メモリ価格の激しい変動が響いたことで、2019年4月から9月期の連結決算では1512億円の最終赤字を計上しています。ただし、足元では市場の価格下落が底打ちの兆しを見せ始めており、今後の業績回復には十分に期待が持てるでしょう。私は、目先の上場延期を悲観的に捉える必要はないと考えています。むしろ新社長の指揮のもと、技術開発にじっくりと投資を行い、企業の基礎体力を蓄える絶好の準備期間に充てるべきです。世界をリードする日本の技術の底力に、今後も目が離せません。
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