みなさんは、病院の窓口で支払う医療費がどのように決まっているかご存知でしょうか。日本では、健康保険証を使って受ける医療の代金は「診療報酬」として国が一律で定めています。この制度が2020年4月1日から一部変更されることになりました。厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会が、2020年2月7日に改定内容を答申したのです。このニュースに対し、SNSでは「大病院に気軽に行けなくなる」「紹介状をもらうのにもお金がかかるのでは」といった不安や戸惑いの声が数多く上がっています。
今回の改定における最大の目的は、身近な地域で医療を提供する「かかりつけ医」への通院を促すことにあります。これまで紹介状を持たずに大規模な病院の外来を受診した場合、5000円以上の追加費用が発生していました。2020年4月からは、この追加負担を義務づける対象病院が約6割も増え、全国で670施設へと拡大します。体調を崩した際は、まず地元の小さなクリニックを受診するという流れを国が本格的に定着させようとしている意図がうかがえるでしょう。
過酷な勤務医を救う!救急病院への入院料上乗せと働き方改革
なぜ、このように患者の流れを制限する必要があるのでしょうか。背景には、大病院で働く勤務医の過酷すぎる労働環境が存在します。一般の労働者には残業時間の上限が設けられていますが、医師の約1割は年間1900時間を超える時間外労働を行っているのが現状です。軽症の患者が減ることで、医師は一刻を争う重症患者の治療に集中できるようになります。この医療の棲み分け(役割分担)は、現場の負担を減らすだけでなく、私たちが受ける医療の質を高めるためにも極めて重要な一歩といえます。
さらに、救急車を年間2000件以上受け入れるような大病院に対しては、入院料を5200円上乗せできる仕組みが導入されます。この増額分は、疲弊する医師の負担を軽減するための資金に充てられる予定です。患者の自己負担は1割から3割ですが、1ヶ月の支払いに上限を設ける「高額療養費制度」があるため、実際の負担は軽くなるケースが多いでしょう。現場を支えるための財源確保としては評価できますが、患者側の理解を得るためには丁寧な説明が求められます。
膨らむ医療費への対策は?見送られたジェネリック普及策と今後の課題
一方で、右肩上がりに増え続ける国の医療費を抑えるという視点では、今回の改定は踏み込み不足だと私は考えます。例えば、価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の処方を促す新たな報酬の設定は見送られてしまいました。効果が同じであれば、安価なお薬をリスト化して優先的に使う仕組みを整えるべきです。全医療費の約2割を占める薬剤費を削減するチャンスを逃したのは非常に惜しく、より踏み込んだ医療費抑制へのアプローチが必要だったのではないでしょうか。
ほかにも、過剰とされる急性期(病気になり始めの時期)のベッド数を、リハビリを行う回復期のベッドへと移行させる基準が厳しくなりましたが、実際の転換が進むかは不透明なままです。また、日本は世界的に見てもMRIやCTといった高度な検査機器の普及率が高いものの、一部で稼働率が低いという無駄も指摘されています。次回の改定に向けては、こうした医療機器の効率的な運用や、本当に必要な場所へ医療費を集中させるためのドラスティックな改革を期待したいところです。
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