プライベートな時間であるはずの休日や深夜に、上司から容赦なく届く業務メールに頭を悩ませていませんか。すぐに対応しなくて良い内容であるにもかかわらず、返信を怠ると翌日以降に厳しく叱責されるという悪循環に陥っているビジネスパーソンは少なくありません。こうした環境では、心が休まる瞬間がなくなってしまうのも当然です。これは単なるマナー違反に留まらず、労働基準法やパワーハラスメント、いわゆる「パワハラ」の観点からも極めて重大な問題を孕んでいます。
インターネット上のSNSでも、この問題に対する悲痛な叫びや共感の声が多数寄せられています。「休みの日もスマホの通知が鳴るたびに動悸がする」「既読スルーすると職場で干されるので返信せざるを得ない」といった、追い詰められた労働者のリアルな反響が目立ちます。このような事態が常態化している職場は、すでに法律のデッドラインを越えている可能性が非常に高いと言えるでしょう。私たちは今こそ、この歪んだ労働環境に対して明確な NO を突き付けるべきです。
まず法的な視点で整理すると、労働者が使用者の「指揮命令下」、つまり会社のコントロール下に置かれている時間はすべて労働時間とみなされます。勤務時間外のメールであっても、上司が何らかの業務指示を出し、部下がその対応を余儀なくされているのであれば、その時間は立派な時間外労働です。会社側が「返信を強制したわけではない」と言い逃れをしたとしても、無視すれば不利益を被る状況を黙認していたのであれば、労働時間として認定される可能性が十分にあります。
したがって、深夜や休日の対応に対しては、労働基準法に基づいた割増賃金、すなわち残業代や休日手当が支払われなければなりません。しかし、現実のオフィスを見渡してみると、このような時間外メールの対応に対して正当な手当が支払われているケースはほとんど耳にしません。契約上の根拠がないまま時間外労働を強いる行為は、完全な違法行為です。泣き寝入りをせず、まずは自分が費やした対応時間の記録をしっかりと残していくことが重要になります。
さらに見逃せないのがハラスメントの問題です。2019年5月29日に成立した通称「パワハラ防止法」では、パワハラを「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つと定義しています。職務上の地位を利用し、緊急性のない用件を休日や深夜に送りつけて部下の平穏な生活を脅かす行為は、この定義に完全に合致するものです。上司という優位な立場からの不必要な連絡は、立派なハラスメントになり得ます。
海外に目を向けると、勤務時間外に仕事の連絡を絶つ「つながらない権利」の法制化が進んでいます。例えばフランスでは、従業員50人以上の企業に対して、時間外の完全ログオフ権に関する定款の策定を義務付けているほどです。ひるがえって日本の現状を見ると、残念ながらそこまで先進的な対策を講じている企業はまだ一握りだと言わざるを得ません。だからこそ、国や企業の対応を待つだけでなく、労働者個人が自衛の手段を知る必要があります。
もし会社側が時間外メールに対する割増賃金の支払いを拒否するのであれば、それは裏を返せば「そのメールは業務指示ではない」と認めたことと同義です。それならば、休日や深夜のメールは一切無視して構いません。政府が旗振りを進める働き方改革において、長時間労働の是正とパワハラ防止は二大巨頭です。企業側は時間外メールが従業員を精神的に追い詰める凶器になり得ることを深く認識し、一刻も早く実効性のあるルールを設けるべきだと強く主張します。
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