【ベトナム国営企業改革の壁】成長の裏で進まぬ民営化の真実と、外資導入の障壁を徹底解説!

アジアの中でも高い経済成長を続けるベトナムですが、その経済の重要な柱である国営企業の改革が、設定された目標を大きく下回り、停滞している状況です。政府は2015年に、一部の業種を除いて外資による株式の100パーセント保有を可能とし、さらに2017年には2020年までに400社強の国営企業の株式を売却する方針を打ち出しました。この積極的な外資受け入れ策は、グローバルな競争に打ち勝つための戦略でしたが、現実は、その改革目標の達成が非常に難しい状態にあります。

この改革の遅れには、根深い理由が存在しています。最大の問題は、現行の法律が、国営企業の経営者に対して株式の売却を積極的に促す仕組みになっていない点です。さらに、売却後にその価格が低いと判断された場合、経営陣が罰則を受ける可能性があるのです。これは、経営者にとって極めて大きなリスク(危険性)となり、改革への取り組みに及び腰になってしまう背景となっています。政府側も、売却を容認したことで後々責任を問われるリスクがあるため、強力な推進力が生まれない構造にあるのです。

SNSでは、「ベトナムの潜在能力はすごいのに、国営企業が足かせになっている」「成長のために民営化は不可欠なはず」「罰則のリスクを負ってまで改革を進める経営者はいないだろう」といった、政府の制度設計への疑問の声が多く寄せられています。ベトナムの経済にとって、国内総生産(GDP)のおよそ3割弱を占める国営企業の体質改善は、さらなる経済活性化の鍵を握る不可欠な要素でしょう。

具体的な動きとして、2019年5月7日にホーチミン証券取引所に上場を果たした国営のベトナム航空のケースを見てみましょう。同社のファム・ゴック・ミン会長は、上場に際し、「今後、段階的に政府の出資比率を引き下げ、海外の投資家を呼び込みたい」と記者団に語りました。ベトナム航空は、政府が株式の86パーセントを所有しており、日本のANAホールディングスが9パーセントを出資する体制です。上場に合わせ、政府も2020年末までに保有比率を51パーセントまで引き下げる方針を示しました。

ANAなど外資が残りの株式の取得に動く可能性も観測されていますが、現地の関係者からは「そもそも売却自体が予定通り進むとは思えない」という懐疑的な声が漏れ聞こえてきます。実際、政府の国営企業からの出資比率の引き下げは、2017年に13社、2018年に20社程度にとどまっており、2019年もわずか10社程度と見込まれています。この実績の少なさが、前述した経営陣のリスク回避志向を裏付けていると言えるでしょう。

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権力構造が改革の最大の障壁

ベトナム在住の証券会社関係者は、株式の売却可否やその価格評価が、「その時の権力者のさじ加減一つでどうにでもなる」と指摘しています。ベトナムは共産党の一党独裁体制下にあり、国営企業改革を強力に断行できるかどうかは、政府内部の権力構造の変化に大きく左右される状況にあるのです。経営者や政府担当者が、権力構造の変化を前に、自身の立場を守るためにリスクのある改革を避けようとするのは、当然の行動原理でしょう。

さらに、ベトナム経済が高い成長率を維持していることも、改革への切迫感を薄れさせている一因と考えられます。ベトナムは2018年にGDP成長率が7パーセントを超えるという目覚ましい成果を上げました。この背景には、米中貿易戦争の影響で、中国からの生産拠点の移転といった地の利を活かした恩恵があるのです。政府の本音として、「無理に外資を呼ばなくても、当面は高い経済成長を維持できる」という見方が透けて見えるかもしれません。

共産党指導部の現行の任期は2021年までとなっており、党内ではすでに新たな人事案が練られ始めています。国営企業側も政府側も、今の最大の関心事は、この権力構造の変動であり、改革を強力に推し進めようという動きは現在のところ見られません。私は、ベトナムが持続的な成長を遂げ、国際的な競争力を高めるためには、この政治的な障壁を乗り越え、法制度による改革推進の仕組みを確立することが不可欠だと考えます。現在の停滞は、国の将来的な発展の可能性を阻害しかねない深刻な問題であると言えるでしょう。

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