2019年6月4日、ロンドンでの米英首脳会談後の共同記者会見において、ドナルド・トランプ米大統領は、次世代通信規格である「5G」(ファイブジー)をめぐる中国の巨大通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)に対する対応について、英国との間に存在する立場の違いを「乗り越えることは可能だ」と力強く述べられました。これは、テリーザ・メイ英首相が6月7日に与党・保守党党首を辞任されることを踏まえ、その後発足する次期政権との間で、より踏み込んだ政策協調が実現することへの強い期待を示しているものと拝察いたします。
トランプ大統領は、会見の中で「英国とはファーウェイを含む全てのことで合意できる」と主張されました。米国政府は、ファーウェイが中国政府によるスパイ活動に関与しているとの見方を強めており、安全保障上の懸念から、同盟国に対して同社製品の利用を控えるよう強く求めています。これに対し、英国は一部の分野でファーウェイの参入を容認する方向で検討を進めており、この点が両国の外交上の大きな火種となっていました。
米政権内には、米国の要求に応じない国に対しては、機密性の高い安全保障に関する情報共有を縮小する方針も示唆されていましたが、大統領は「(英国に関して)それは考えていない」と発言され、英国に対する特段の配慮を滲ませました。これにより、現時点では、米英間の「特別な関係」がファーウェイ問題を理由に直ちに損なわれる懸念は低いと見て取れます。
今回の首脳会談は、メイ首相の党首辞任という政治的な節目直前に開催されたため、具体的な政策面での大きな成果は限定的でした。会談を通じて目立ったのは、トランプ大統領から次期英国政権との協力を強く意識した発言が相次いだ点です。特に、英国の欧州連合(EU)からの離脱、すなわち「ブレグジット」については、「そう遠くない将来に起きるだろう」と指摘し、早期の離脱が望ましいという見解をにじませられました。
さらに、メイ首相の後任候補として、強硬な離脱派として知られるボリス・ジョンソン前外相を名指しで「すばらしい成果を出している」と評価されました。トランプ大統領は、反EUの姿勢を鮮明にし、国際的な枠組みを重視する多国間主義に懐疑的な強硬離脱派の政治家は、ご自身の政治思想と近いと見ていらっしゃるようです。そのため、個人的な信頼関係を早期に構築し、外交政策全般において連携の余地が広がることへの期待感を抱かれているのでしょう。
これに対し、退任を控えるメイ首相は、会見で「(米英の)特別な関係の土台は協力と妥協だ」と述べられました。この「協力と妥協」という言葉には、米国に対して柔軟な対応を求める意図が込められているように感じられます。さらに、首相はイラン核合意と地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を引き続き支持する考えを改めて表明されました。これは、これら二つの国際合意から一方的に離脱を表明したトランプ政権の姿勢を、暗に批判したものと理解できるでしょう。
トランプ大統領は、2020年の大統領選挙に向け、目に見える外交的・経済的な成果を強く求めておられます。この一環として、英国との新たな貿易協定の締結にも非常に意欲を示されました。大統領は、英国がEUを離脱した後に二国間で新たな自由貿易協定を結んだ場合、米英間の貿易量が「2~3倍になるだろう」と指摘されており、経済的なメリットを強調することで、次期政権へのアピールを図られたものと推察いたします。
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