2018年に世界を揺るがせたカルロス・ゴーン元会長の逮捕劇から、2019年11月19日でちょうど1年という節目を迎えました。かつて「日産の救世主」と称えられたリーダーの不在は、同社に想像以上の深刻な停滞をもたらしています。この1年間で日産自動車と仏ルノーの株価は揃って約3割も下落しており、かつての輝きは完全に失われてしまったと言っても過言ではありません。SNS上でも「日産の車は好きだけど、経営が不安定すぎて買いにくい」といった、ブランドイメージの失墜を嘆く消費者の声が後を絶たない状況です。
日産が直面している最大の危機は、その収益性の激激な悪化にあります。2019年11月12日に発表された2020年3月期の業績予想では、連結純利益が前期比で66%も減少する1100億円にまで下方修正されました。本業の儲けを示す指標である「売上高営業利益率」は1.4%まで落ち込む見通しで、これは皮肉にもゴーン氏が経営再建に乗り出した2000年3月期とほぼ同水準です。つまり、この20年間で積み上げてきた利益構造の強みが、わずか1年足らずで崩壊の危機に瀕しているのです。
崩れたルノーとのパワーバランスと資本の壁
日産とルノーの関係性も、かつてないほどギクシャクしています。現在、ルノーは日産株の4割強を保有する筆頭株主ですが、日産側は対等な関係を築くためにルノーの出資比率引き下げを強く求めてきました。しかし、日産の株価が1株690円前後にまで低迷している現状では、ルノーが株を手放せば巨額の損失を抱えるリスクがあります。また、ルノー自身の利益の半分以上を日産からの配当が支えてきたという歪な依存構造も、関係修復を困難にする足かせとなっているようです。
投資家の視点で見れば、両社の足踏みは「機会損失」そのものと言えるでしょう。日産の時価総額は現在約2.9兆円ですが、2006年のピーク時には6兆円を超えていたことを考えると、企業の価値がいかに毀損されたかが明白です。筆者は、この停滞の背景に「内向きな権力闘争」が優先され、顧客や市場への視点が欠落していたのではないかと強く感じます。経営陣が組織の保身に奔走している間に、競合他社は着実に次世代への布石を打ち、日産を追い抜いていきました。
次世代技術「CASE」競争からの脱落危機
自動車業界には今、CASEと呼ばれる巨大な変革の波が押し寄せています。これは「Connected(つながる)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(共有)」「Electric(電動化)」の頭文字を取った専門用語で、これからの車作りを決定づける4つの重要分野を指します。日産はかつて電気自動車「リーフ」で世界をリードしていましたが、今やその優位性は消滅しつつあります。研究開発費の規模を見ても、トヨタ自動車が年間1兆円を超える投資を行う一方で、日産はその約半分に留まっています。
トヨタがSUBARUやスズキとの提携を強化し、「チームジャパン」として陣営を拡大しているのに対し、日産とルノーは「お互いの強みをどう活かすか」という建設的な議論にこの1年を費やせませんでした。社外取締役からも「1年を無駄にした自覚が足りない」と厳しい叱咤が飛ぶほど、現場の危機感と経営のスピード感には乖離が見られます。日産が再び「技術の車」として再起するためには、一刻も早くお家騒動を終結させ、未来への投資に舵を切る必要があるのではないでしょうか。
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