世界中で巻き起こる和食ブームを追い風に、日本の素晴らしい食材を海外へ届ける動きが活発化しています。財務省が発表した最新の貿易統計によると、2018年末から次々とスタートした経済連携協定(EPA)が、日本の農林水産品の輸出を力強く牽引していることが分かりました。特にヨーロッパや、環太平洋経済連携協定(TPP)の参加国に対する輸出額が高い伸びを記録しており、関税引き下げによる恩恵が早くも数字として表れているのです。
SNS上でも「地元の特産品が海外のスーパーに並ぶ時代が来た」「日本の美味しいものが世界に認められるのは誇らしい」といった歓喜の声が多数寄せられています。国家間で結ばれる貿易のルール緩和が、日本の生産者にとってこれ以上ない強力な追い風になっているのは間違いありません。しかしその一方で、世界中へ均等に波及しているわけではなく、輸出市場の勢力図には明暗がはっきりと分かれているのが現状です。
特に躍進が目立つのはヨーロッパ連合(EU)向けの市場で、前年の同じ時期と比べて10.7%ものプラスを記録しました。さらにTPPの手続きを終えた6カ国に対しても4.5%増と順調に推移しており、世界全体への輸出の伸び率である1.8%を大きく上回る健闘を見せています。関税という国境の壁が取り払われたことで、日本の高品質な食品や飲料が、現地の人々にとってより身近な存在へと変化しているのでしょう。
アルコール飲料や和牛が欧州で大人気
今回の自由化で特に大きな恩恵を受けたのがお酒のジャンルです。これまでヨーロッパ向けには最大で100リットルあたり32ユーロもの重い税金が課せられていましたが、日欧EPAの発効によってこれが即座に撤廃されました。この減税効果により、アルコール飲料全体の輸出額は約2割も跳ね上がっています。関係者が大きな期待を寄せていた日本酒の輸出も5%増と堅調で、現地のレストランなどでの需要が確実に高まっているようです。
さらに、高級食材の代名詞である牛肉も関税がゼロになり、世界的な和牛ブームも手伝って輸出額が3割増という驚異的な伸びを記録しました。2020年01月06日に三重県で行われた年頭記者会見において、安倍晋三首相も「松阪牛をはじめとする我が国の農林水産物が世界へ羽ばたく絶好の好機を迎えている」と発言し、その成果を熱烈にアピールしています。ブランド食材の海外進出は、地域の活性化にも繋がる素晴らしい取り組みだと感じます。
また、TPP加盟国であるベトナムに向けては、大衆魚であるサバの輸出額が4割も増加しました。こちらも関税の即時撤廃がダイレクトに影響しており、現地の食卓に日本の水産物が浸透している証拠と言えます。同国向けには牛肉の輸出も同じく4割ほど増えており、アジア圏における経済成長と購買力の高まりが、日本の農水産品にとって巨大なチャンスをもたらしている事実は見逃せません。
政治の混乱と外交対立が輸出目標の壁に
明るいニュースが飛び交う一方で、日本政府が悲願として掲げてきた「2019年の輸出額1兆円」という大目標の達成には、黄色信号が灯っています。2018年は前年比12.4%増と猛烈な勢いで拡大していたものの、2019年は10月までの段階で前年同期比0.8%増と、突如としてブレーキがかかってしまいました。その背景には、主要な輸出先における深刻な政情不安や、国家間の外交ルートの冷え込みが影を落としています。
最大の輸出先である香港では、長期化する大規模デモによって経済が混乱し、日本からの輸出額は3.4%減少しました。現地で最も取引の多い真珠は、主要な買い手である中国本土からの観光客が激減したため、宝飾品の売り上げが半減する事態に陥っています。「現地での展示会の売上高がこれまでの半分になってしまった」と業界関係者からも悲痛な声が上がっており、政治的な不安定さがダイレクトにビジネスへ打撃を与えている実態が浮き彫りになりました。
さらに、輸出管理の問題を発端とする日韓対立も深刻です。韓国国内では日本製品の不買運動が急速に広がり、日本が誇るビールなどのアルコール飲料の輸出が激減した結果、韓国向け全体の輸出額は16.9%も落ち込んでしまいました。また、2018年に30%以上の爆発的な伸びを見せていた中国向け輸出も、2019年01月から10月までのデータでは14.9%増に留まり、その勢いに陰りが見え始めています。
編集部が見る今後の展望と市場開拓の意義
ネット上では「政治の喧嘩に民間ビジネスや農家が巻き込まれるのは勘弁してほしい」「特定の国に依存しすぎるリスクが浮き彫りになった」という冷静な意見も多く見られます。筆者の視点としても、生活に直結する食料品が国際政治の道具のようになってしまう現状には強い危機感を覚えます。だからこそ、今後はリスクを分散させるためにも、自由化された新たな市場への開拓を一段と加速させるべきではないでしょうか。
貿易自由化と聞くと、安価な外国産が流入して国内の農業が打撃を受けるというネガティブな側面ばかりが強調されがちです。しかし、視点を変えれば日本の安全で美味しい食材を世界へ売り出す最高のチャンスでもあります。2020年01月01日には日米貿易協定もスタートし、年内には東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の大筋合意を目指すなど、自由貿易のネットワークはさらに広がる見通しです。
政府は今後、欧米の厳しい衛生基準を国内の事業者がスムーズにクリアできるよう、認証取得のサポート体制を強化する方針です。少子高齢化によって国内の市場が縮小していく中、日本の農業や水産業が生き残るための鍵は、まさにこの「輸出の拡大」にあります。政治の荒波に負けず、日本の生産者が真心を込めて作った食材が世界中の人々の笑顔を作る未来を、私たちは全力で応援していくべきでしょう。
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