2019年6月7日より、東京・有楽町のTOHOシネマズ 日比谷などで公開が始まったディズニー実写版『アラジン』は、公開直後から大きな話題を呼んでいます。本作は、1992年のアニメーション映画『アラジン』を原作とし、監督には『コードネーム U.N.C.L.E.』など、派手なアクションと物語のダイナミックな展開を得意とするガイ・リッチー氏が脚本も兼任しています。この実写化によって、長年愛されてきた物語に新しい息吹が吹き込まれました。
物語の舞台は、活気に満ちた架空の都市アグラバーです。ここでは、貧しいながらも心優しい青年アラジン(メナ・マスード氏)と、身分を隠して町へ繰り出した王女ジャスミン(ナオミ・スコット氏)が運命的な出会いを果たします。ジャスミンを一人の侍女と勘違いしたアラジンは、彼女に再び会いたい一心で城に忍び込みますが、これが王座を狙う悪名高き大臣ジャファーの企みに巻き込まれるきっかけとなってしまうのです。アラジンはジャファーの命令で「魔法のランプ」を探しに洞窟に入り、そこでランプの魔人ジーニーと出会います。
ランプをこすると現れるのは、俳優ウィル・スミス氏が演じる巨大な魔人ジーニーです。彼が現れることで、アラジンには三つの願いを叶えるチャンスが与えられます。しかし、本作の注目すべき点は、単なる貧しい青年が一発逆転を狙う物語にとどまらないことです。国王は娘のジャスミンを、どこかの国の王子と結婚させて国を譲りたいと考えていますが、ジャスミンは違います。彼女は、従来の「白馬のプリンスを待つお姫様」像を脱ぎ捨て、「自分で国を治めたい」という強い自立心を持っています。これは、近年のディズニー作品、特に『美女と野獣』あたりから顕著になった、ヒロインが自分の道を自分で切り開くという潮流を強く反映したキャラクター像でしょう。
ジャスミンもまた、王座に就くことを望み、同時にアラジンという青年に心惹かれていきます。一方で、アラジンは彼女の正体を知り、身分の違いという現実の壁に直面し、心が揺れ動くのです。貧しさから脱却し、愛する女性に釣り合う男になろうとするアラジンの葛藤と、王座と愛の板挟みになるジャスミンの凛々しい生き方は、観客に強い共感を呼びます。SNSなどでの反響を見ても、特にナオミ・スコット氏が演じるジャスミンの、現代的な価値観を持った自立した女性像に対する称賛の声が非常に多いようです。
私見ですが、プリンセスがただ「守られる存在」ではなく、国を動かす「リーダー」を目指すという設定は、現代社会の女性の活躍を後押しする非常に重要なメッセージであると考えます。この新生ジャスミンの姿こそが、時代を超えて多くの人々の心を掴む新たな魅力になっているに違いありません。しかし、そんなシリアスなテーマの一方で、物語には甘いロマンスも満載です。
二人が魔法の絨毯に乗って夜空を優雅に駆け巡るシーンは、本作のハイライトの一つです。ここで流れる「ホール・ニュー・ワールド」は、アニメ版のためにアラン・メンケン氏が作曲し、大ヒットした名曲ですが、その輝きは実写版でも健在です。今回は『ラ・ラ・ランド』の楽曲を手がけたコンビも参加し、ジーニーやジャスミンのソロ曲に新しい変化が加えられています。ガイ・リッチー監督らしい派手で賑やかな演出は確かに楽しいのですが、個人的には、ロマンティックな魔法の絨毯の旅をもう少し長く、情緒豊かに描いてほしかったという思いもあります。しかし、ヒロインが凛々しく自立して生きる現代において、物語が甘くなりすぎないのは、ある意味、必然なのかもしれません。この実写版は、旧作へのリスペクトを持ちながらも、現代の観客が求める新しい価値観をしっかりと提示した、見応えのある作品であると言えるでしょう。
コメント